近年ミトコンドリアゲノムの遺伝子配置変異は当初考えられていたよりも頻繁に見られることが明らかになってきました.しかしながら,これまでのミトコンドリア遺伝子配置変異は一部の遺伝子領域に限られる小規模なものでした.
カライワシ類 (Elopomorpha) の分子系統学的研究を行う過程で,我々は奇妙な形態で知られる深海魚のフクロウナギ,Eurypharynx pelecanoides, (フクロウナギ科) とフウセンウナギ, Saccopharynx lavenbergi, (フウセンウナギ科) のミトコンドリアゲノムで,他の脊椎動物とは大きく異なる遺伝子配置を発見しました (図).魚類 59 種のミトコンドリアゲノムを用いて系統解析を行ったところ,フウセンウナギ類の特異な遺伝子配置は脊椎動物で共通に見られる配置を祖先に持つことが示唆されました.
この特異な配置は,フウセンウナギ類共通祖先のミトコンドリアゲノムで,12 k bp を超える領域の重複とこれに引き続いた各遺伝子の欠失がおこったために生じたと考えられました.