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21 Jan. 2019. Jun Inoue |
神経堤 (neural crest) とプラコード (表皮の肥厚部) は,脊椎動物の黎明期に新しく進化した胚細胞である (Bae et al. 2018; Hockman et al. 2019).脊椎動物以外には存在しない.神経堤とプラコードからは,脊椎動物の非視覚的な感覚性末梢神経系のほとんどを含む,数多くの重要な成体構造が派生する.対照的に,ナメクジウオやホヤでは,感覚性の末梢神経系はあるが,神経堤やプラコードはない.神経堤とプラコードの獲得は,頭部に複雑性をもたらすなど,脊椎動物の進化的な成功に貢献 (<Feinberg & Malllatt 2016).
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神経堤
神経管の背側に誘導される領域.神経冠とも呼ばれる.脊椎動物において得られた第四の胚葉とする見方もある.
神経堤細胞は,神経堤からから脱上皮化 (delamination) し,上皮から間葉への転換 (epithelial-mesenchymal transition, EMG: 上皮間充組織転換) を行った後に,胚体内の様々な部位に遊走する.その後,胚体各部でさまざまな細胞型に分化する.
神経堤は,頭部と体幹において異なった機能を持つ.頭部神経堤は,脊椎動物に特徴的な頭部構築と密接な関係にある.その他,体全体にわたって色素細胞や末梢神経系,パラニューロンをもたらす.
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プラコード
正式名称を外胚葉プラコード,あるいは神経原生プラコードという.頭部や頸部で発生し,眼,耳,花など,感覚に関連する構造を形成.ほとんどは体表面にとどまり,神経堤細胞のように移動しない.
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Harata A, Hirakawa M, Sakuma T, Yamamoto T, Hashimoto C. 2018.
Nucleotide receptor P2RY4 is required for head formation via induction and maintenance of head organizer in Xenopus laevis. Dev Growth Differ. 日本語.
Horie R, Hazbun A, Chen K, Cao C, Levine M, Horie T. 2018.
Shared evolutionary origin of vertebrate neural crest and cranial placodes. Nature 560:228-232.
堀江良子・堀江健生 2018
脊椎動物の神経堤細胞と頭部プラコードは進化的に共通の起源を持つ.Link.
Horie et al. (2018) の日本語解説.
Green SA, Uy BR, & Bronner ME 2017
Ancient evolutionary origin of vertebrate enteric neurons from trunk-derived neural crest. Nature 544(7648):88-91.
Bronner ME (2015)
Evolution: On the crest of becoming vertebrate. Nature 527(7578):311-312.
脊椎動物の神経堤細胞と性質の共通する細胞を,無脊椎動物で発見.Stolfi et al. (2015) を参照.
Green SA, Simoes-Costa M, & Bronner ME (2015)
Evolution of vertebrates as viewed from the crest. Nature 520(7548):474–482.
総説.神経堤に由来する細胞と組織に注目.初期の神経堤細胞の形成に関わる遺伝子制御ネットワークを議論.どのようにして,神経堤特化プログラムの追加が,中枢神経系境界にある細胞に多能性と移動能力を与えたか,論じる.
神経堤細胞から派生した細胞の多くは,相同な細胞が原索動物にあると指摘 (P475左上).これら相同な細胞は,コオプトされ神経堤に組み込まれたか,あるいは収束進化の結果とする.コオプションの例として,pharyngeal cellular cartilage をあげる.その起源は,無脊椎脊索動物の口部にある細胞性軟骨を司るプログラム (Jandzik et al. 15) の再利用にある,とする.
FoxD3 や SoxE,TFAP2 のようなキーとなる神経堤特定遺伝子の統合が,
神経堤調節因子のコントロールのもとに分化バッテリーをコオプトし,神経堤細胞の進化を促進したと考察 (P480右下).
Jandzik, D. et al. 2015.
Evolution of the new vertebrate head by co-option of an ancient chordate skeletal tissue. Nature 518, 534–537 (2015).
脊椎動物の頭部がどのように進化したのか,議論の的であった.神経堤に由来するコラーゲン性の細胞性軟骨に由来するとされたが,無脊椎の脊索動物には神経堤が存在しないため,頭部軟骨の起源は不明であった.この研究は,ナメクジウオの幼生で一時的に形成される組織が,脊索動物の細胞性軟骨とほとんど変わらないことを示す.このことは,脊椎動物の頭部骨格の出現が,新しい骨格組織の獲得ではなく,頭部全体へ細胞性軟骨組織の拡張 (転用) によることを示唆する (こちらを参照).
頭索動物の細胞性軟骨を判定.この結果は,神経堤由来の軟骨が,新たに作られたのではなく,コオプトされたことを支持する (< Green et al. 15).
コオプションイベントが,AmphiSoxE 遺伝子の神経堤 cis-調節配列の獲得を促進した.新たな cis-調節領域配列が進化することで,神経堤細胞で SoxE が発現するようになった (< Tail et al. 16).
Munoz WA & Trainor PA (2015)
Neural crest cell evolution: how and when did a neural crest cell become a neural crest cell. Curr Top Dev Biol 111:3-26.
総説.神経堤細胞 (NCC) の起源.
NCC に類似した細胞系列が尾索類で同定されたことは,神経堤の起源に重要な示唆を与える.原始的な NCC like 細胞に移動能力を与えるために,上皮間充織転換 (EMP) GRN と既存の異なるネットワークをコオプトして,脊椎動物のNCC を特化する遺伝子制御ネットワークは完成した.尾索動物の原始的な NCC like 細胞は,NCC がどのような細胞から生まれたのか,初期の機能は何か,を示す (P11中).
ナメクジウオには NCC はないが,
神経堤の特定化,移動,最終的な分化に必要なほとんどの遺伝子のホモログを持っている (Snail1/2, AP-2, FaxD3, Twist, Id, など).しかし,Snail2 以外はナメクジウオの神経板境界で発現しない.このことは,神経堤細胞は,部分的に遺伝子を原始的な GRN (脊索動物祖先の神経板境界に存在した) にコオプトすることで,進化したことを示す (P16).
NCC GRN にコプトされる際に,
NCC 特定化因子は様々な能力が必要であった:EMT,神経管からの移動,新たな cell type への分化.このうち EMT を支配する分子は,最後にコオプトされたとされる (P18上).
Simoes-Costa M & Bronner ME 2015
Establishing neural crest identity: a gene regulatory recipe. Development 142(2):242-257.
総説.遺伝子制御ネットワークの支回路ごと (Fig. 3-7) と全体像 (Fig. 8) を詳細に解説.
Stolfi A, Ryan K, Meinertzhagen IA, & Christiaen L (2015)
Migratory neuronal progenitors arise from the neural plate borders in tunicates. Nature 527(7578):371-374.
脊椎動物の神経堤の起源をホヤに見出す.
カタユウレイボヤ・オタマジャクシ型幼生にある神経性細胞が,脊椎動物で神経堤に由来する脊髄神経節ニューロンと性質が類似すると指摘.この細胞の前駆体は,尾側の神経板縁細胞から派生し,層から離れて神経管の両側に沿って方向性のある遊走をした後,軸索に分化する.このことから,遊走という,これまで脊椎動物・神経堤細胞に特有と考えられていた性質が,これまで考えられていたよりも古いことが示唆された.評価はこちら.
Green SA & Bronner ME 2014
The lamprey: a jawless vertebrate model system for examining origin of the neural crest and other vertebrate traits. Differentiation 87(1-2):44-51.
Feinberg TE & Mallatt J (2013)
The evolutionary and genetic origins of consciousness in the Cambrian Period over 500 million years ago. Front Psychol 4:667.
脊索動物 3 系統の幼生で脳の構造を比較 (Fig. 2).神経堤の発生過程 (Fig. 3).
Feng G, et al. (2013)
Developmental stage-dependent transcriptional regulatory pathways control neuroblast lineage progression. Development 140:3838–3847.
脊椎動物の神経板境界と神経堤とは異なり,センチュウの側方神経芽細胞が特定される分子メカニズムは知られていない (<Li17, E6356右下).
Green SA & Bronner ME 2013
Gene duplications and the early evolution of neural crest development. Semin. Cell Dev. Biol. 24(2):95-100.
総説.
Hall, B. K., & Gillis, J. A. (2013).
Incremental evolution of the neural crest, neural crest cells and neural crest-derived skeletal tissues. Journal of Anatomy, 222(1), 19–31.
総説.形態あるいは分子マーカーを用いて探索しても,尾索動物にある神経堤に類似の細胞は頭索動物にはない (< Munoz & Trainor 15).
Ivashkin E & Adameyko I (2013)
Progenitors of the protochordate ocellus as an evolutionary origin of the neural crest. Evodevo 4.
仮説.ナメクジウオにおける神経堤細胞の相同器官候補.脊索動物祖先の単眼.
Medeiros, D. M. (2013).
The evolution of the neural crest: New perspectives from lamprey and invertebrate neural crest-like cells. Wiley Interdisciplinary Reviews. Developmental Biology, 2(1), 1–15.
総説.頭索動物と尾索動物は,神経板境界支回路を持つ.神経板境界を特定する遺伝子制御相互作用は脊索動物で共有されている (< Green et al. 15).
Simoes-Costa M & Bronner ME 2013
Insights into neural crest development and evolution from genomic analysis. Genome Res. 23(7):1069-1080.
脊椎動物・神経堤は,GRN の神経堤特定カーネルによって特徴付けられている.その GRN カーネルは,これらの細胞の多能性や EMT (上皮間充織転換 epithelial mesenchymal transformation)・移動を司る (< Green et al. 15).
Van Otterloo E, Cornell RA, Medeiros DM, & Garnett AT (2013)
Gene regulatory evolution and the origin of macroevolutionary novelties: insights from the neural crest. Genesis 51(7):457-470.
Abitua, P.B., Wagner, E., Navarrete, I.A., Levine, M., 2012.
Identification of a rudimentary neural crest in a non-vertebrate chordate. Nature 492, 104–107.
カタユウレイボヤで,神経堤に類似した頭部メラノサイト系列 (a9.49 割球) を発見.Twist (twist-like 2) をこの系列で発現させると,移動する外胚葉間充織へ再プログラム化できることを示す.
この発見は,神経堤メラノサイトの調節ネットワークが,尾索動物と脊椎動物の分岐以前に存在したことを示唆.Twist のような間充織決定因子が神経板外胚葉に組み込まれることが,脊索動物の新しい頭部の出現に重要であったと指摘.
Bronner ME & LeDouarin NM 2012
Development and evolution of the neural crest: an overview. Dev. Biol. 366(1):2-9.
総説.
Bronner-Fraser M
Formation, Migration and Evolution of the Neural Crest.
スライド.神経堤形成の遺伝子制御ネットワークをナメクジウオとヤツメウナギで比較.
Paps J, Holland PW, & Shimeld SM (2012)
A genome-wide view of transcription factor gene diversity in chordate evolution: less gene loss in amphioxus? Brief Funct Genomics 11(2):177-186.
転写因子の遺伝子コピー数および gene loss, gene gain を,脊索動物主要系統間で BLAST と HMM 検索によって比較.少なくとも転写因子に関しては,頭索動物は,他の脊索動物 2 系統よりも遺伝子のコピー数の増減が少なく安定していると指摘.
ほとんどの転写因子 superclass では,遺伝子ファミリーは,動物進化の初期に生じた遺伝子重複によって多様化した.遺伝子ファミリーのほとんどは,概して bilaterians の共通祖先では一つの遺伝子であったものが進化したと定義できる.そして遺伝子ファミリーは,各系統内部で生じた遺伝子重複によってさらに多様化した (P177 右).
Janvier, P. (2011).
Comparative anatomy: All vertebrates do have vertebrae. Current Biology, 21(17), R661–R663.
Betancur, P., Bronner-Fraser, M. & Sauka-Spengler, T. 2010.
Assembling neural crest regulatory circuits into a gene regulatory network. Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 26, 581–603 (2010).
神経堤遺伝子制御ネットワークを提示.
Yu JK (2010)
The evolutionary origin of the vertebrate neural crest and its developmental gene regulatory network--insights from amphioxus. Zoology (Jena) 113(1):1-9.
総説.ナメクジウオから見た,脊椎動物・神経堤の進化的起源とその発生遺伝子調節ネットワーク.
神経堤とプラコードが出現することで,咽頭部と頭部周辺の感覚器が合成され,初期の脊椎動物は濾過食から活動的な捕食者になれたと指摘されている (P2左下).共通した遺伝子セットが脊椎動物・神経版辺縁部で活動する (P2右した).
神経板境界を特定する遺伝子:Dlx, Msx, Pax3/7, Zic
神経堤細胞のその後を特定する遺伝子:Snail/Slug, Ap-2, FoxD3, Twist, Id, cMyc, Sox9/10
日下部 岳広 (2009)
ホヤの神経系と行動.さまざまな神経系をもつ動物たち.日本比較整理生化学会編.p168-191.
総説.神経系から,ホヤの生存戦略と脊椎動物の共通祖先の姿を考察.
脊椎動物のおもな神経伝達物質のほとんどが,ホヤ幼生の単純な神経系でも使われている.脊椎動物の神経系の基本設計は,ホヤとの共通祖先の段階でできあがっていたらしい.予想以上に,神経系はホヤと脊椎動物で類似.
棘皮動物では,半索動物で報告されたような (Lowe et al.03),発生遺伝子発現の報告な多くない.幼生の繊毛帯での Otx 遺伝子発現などの報告はあるが,ウニのHox 遺伝子発現で,前後軸との対応を議論できるような事例は,ウニ成体原基での発現のみ (Arenas-Mena et al. 00).
Nomaksteinsky M, Rottinger E, Dufour HD, Chettouh Z, Lowe CJ, Martindale MQ, Brunet JF: 2009.
Centralization of the deuterostome nervous system predates chordates. Curr Biol, 19:1264-1269.
Baker, C.V., 2008.
The evolution and elaboration of vertebrate neural crest cells. Current Opinion in Genetics and Development 18, 536–543.
脊椎動物・神経堤細胞で発現する遺伝子のいくつかが,ナメクジウオ・神経板の境界に存在する移動性の細胞で見られる.これらの細胞は神経堤進化の初期段階にあるかもしれない (< Nielsen 2012).
Donoghue PC, Graham A, & Kelsh RN (2008)
The origin and evolution of the neural crest. Bioessays 30(6):530-541.
総説.神経堤細胞に相同な細胞を無脊椎動物から探るのは難しい.このため神経堤の,脊索動物内部での起源よりも,脊椎動物内部での進化に注目すべきと指摘.神経堤に関連する遺伝子のリスト (Table 1) を表示.
Patterning signals, 神経板特定因子,神経堤特定因子などからなるサブ回路の保持パターンを左右相称動物の系統樹上にマッピング (Fig. 3).こらの遺伝子が神経堤 GRN に組み入れられた時期と,転写因子それぞれの起源は異なる.これら転写因子の起源は,通常,後生動物の共通祖先まで遡る (Fig. 3 legend).神経堤細胞のもととなる細胞は原索動物にも存在するが,鍵となる遺伝子が神経堤形成に編入されたのは脊椎動物が進化したあとである (P533左下).
Nikitina, N., Sauka-Spengler, T., Bronner-Fraser, M., 2008.
Dissecting early regulatory relationships in the lamprey neural crest gene network. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105, 20083–20088.
神経堤・遺伝子制御ネットワークが無顎類でも保持 (< Yu10).
Sauka-Spengler, T. & Bronner-Fraser, M. 2008.
A gene regulatory network orchestrates neural crest formation. Nature Rev. Mol. Cell Biol. 9, 557–568.
総説.神経堤が発生する過程と関わる遺伝子を詳細な図で説明 (Fig. 1).
Thomas, A. J., & Erickson, C. A. (2008).
The making of a melanocyte: The specification of melanoblasts from the neural crest. Pigment Cell & Melanoma Research, 21(6), 598–610.
Dupin E, Calloni G, Real C, Goncalves-Trentin A, Le Douarin NM. 2007.
Neural crest progenitors and stem cells. Comptes Rendus Biologies 330:521–529.
Jeffery WR. 2007.
Chordate ancestry of the neural crest: New insights from ascidians. Sem Cell Develop Biol 18:481–491.
総説.
Martinez-Morales, J.R., Henrich, T., Ramialison, M., Wittbrodt, J., 2007.
New genes in the evolution of the neural crest differentiation program. Genome Biol. 8,
R36.
神経堤の誘導と特化に必要な遺伝要素のほとんどは脊索動物の祖先に存在したが,神経堤派生物の分化に関連した分子の多くは脊椎動物にしかない (< Yu 10).
Meulemans D, Bronner-Fraser M. 2007.
Insights from Amphioxus into the evolution of vertebrate cartilage. PLoS ONE 2:e787.
Sauka-Spengler, T., Meulemans, D., Jones, M., Bronner-Fraser, M., 2007.
Ancient evolutionary origin of the neural crest gene regulatory network. Dev. Cell 13, 405–420.
神経堤・遺伝子制御ネットワークがヤツメウナギでも保持されていることを示す.このことは,神経堤 GRN が全脊椎動物で共有されることを意味する.転写因子 Ets-1 と Twist は,移動前の神経堤には存在せず.Ets-1 は有顎類の頭部神経堤の特定に必須 (Betancur et al 10) (< Green et al 15).
Ota KG, Kuraku S, & Kuratani S (2007)
Hagfish embryology with reference to the evolution of the neural crest. Nature 446(7136):672-675.
神経堤は,脊椎動物の共通祖先において,脱上皮化し移動する細胞集団としてすでに出現していたと考察.
ヌタウナギで,組織学的な証拠から神経堤細胞と考えられる細胞を示唆.これらの細胞は,魚類は両生類の神経堤細胞とよく似た経路に沿って移動する,脱上皮化した細胞として出現.さらに,Pax6, Pax3/7, SoxEa, Sox9 の相同遺伝子など制御遺伝子を単離し,その発現を解明.その結果,ヌタウナギ神経堤が,脊椎動物と共通した分子機構によって特異化されると示唆.
ヤツメウナギに比べヌタウナギでは,発生全般,とくに初期胚期の解析は進んでいなかった.このため,神経堤の進化など,系統発生学上の重要な問題を解く試みは成功していなかった.
西田宏記,西駕秀俊. (2007)
背側神経管の出現.神経系の多様性その起源と進化, eds 阿形清和 & 小泉修 (培風館, 東京), pp 133-175.
総説.ホヤ胚発生における中枢神経系の形成メカニズムについて.ホヤには,神経堤細胞はないが,その形成に関わる多くの遺伝子の発現は見られる (P164).
ナメクジウオには神経堤細胞はないとされる.しかし,神経堤関連の遺伝子 Pax3/7, Dlx, Snail の発現は,ホヤの場合と同じく,神経管の背側で認められる.ただし Bmp2/4 の発現は,ホヤの場合と異なって,神経管ができる頃,背側表皮には認められない.ナメクジウオでは,神経堤細胞関連遺伝子の発現は,かなりそろっているが神経堤細胞はない,と考えられている.
和田洋,倉谷滋 (2007)
脳,神経堤,プラコードの成立と脊椎動物への道. 動物の形態進化のメカニズム, eds 倉谷滋 & 佐藤矩行 (培風館, 東京), pp 152-161.
総説.
Castro LF, Rasmussen SL, Holland PWH, Holland ND, Holland LZ (2006)
A Gbx homeobox gene in amphioxus: insights into ancestry of the ANTP class and evolution of the midbrain/hindbrain boundary. Dev Biol 295: 40–51.
末梢神経系に少しだけ寄与する神経堤とプラコードの原基的前駆体がナメクジウオに存在 (< Feinberg & Mallatt 17).
Jeffery WR. 2006.
Ascidian neural crest-like cells: Phylogenetic distribution, relationship to larval complexity, and pigment cell fate. J Experi Zool Part B-Molec Develop Evol 306B:470–480.
Sauka-Spengler T, Bronner-Fraser M. 2006.
Development and evolution of the migratory neural crest: a gene regulatory perspective. Curr Opn Genetics Develop 16:360–366.
Raible DW. 2006.
Development of the neural crest: achieving specificity in regulatory pathways. Curr Op Cell Biol 18:698–703.
Wada H. Makabe K. 2006
Genome duplications of early vertebrates as a possible chronicle of the evolutionary history of the neural crest. International Journal of Biological Sciences, 2, 133-141.
神経堤 GRN に含まれる転写因子遺伝子の遺伝子系統樹を図示.
脊椎動物の神経堤細胞の分化を制御する転写因子 Dll は,ナメクジウオでは神経管に接する表皮側の細胞で発現し,ホヤでは Dll の他にも, Msx, Pax3/7 が神経管背側や,近隣の表皮細胞で発現する.つまり,ホヤやナメクジウオの神経管と表皮の境界にも,脱上皮化や移動はしないものの,神経管とも他の表皮細胞とも異なる特定の細胞集団が分化する.
神経堤の分化に関わる遺伝子の中には,Snail や Zic のように,ホヤやナメクジウオの背側正中の表皮に発現しないものもある.(< Wada & Kuratani 07).
Arendt D. 2005.
Genes and homology in nervous system evolution: Comparing gene functions, expression patterns, and cell type molecular fingerprints. Theo Biosci 124:185–197.
Cheung, M. et al. 2005.
The transcriptional control of trunk neural crest induction, survival, and delamination. Developmental cell 8.
倉谷滋 (2005)
脊椎動物の,主として頭部形成に関わる進化学的研究. 日本動物学会・学会賞.
Meulemans, D. & Bronner-Fraser, M. 2005.
Central role of gene cooption in neural crest evolution. J. Exp. Zool. B. Mol. Dev. Evol. 304, 298–303.
脊索動物 3 系統間で,神経板境界の発生過程を比較した図を示す (Fig. 4).
Sato T, Sasai N, & Sasai Y (2005)
Neural crest determination by co-activation of Pax3 and Zic1 genes in Xenopus ectoderm. Development 132(10):2355-2363.
神経堤の誘導開始に Pax3 および Zic1 の共発現が重要な役割を担うことを示す.
Takeuchi K, Satou Y, Yamamoto H, Satoh N. 2005.
A genome-wide survey of genes for enzymes involved in pigment synthesis in an ascidian, Ciona intestinalis. Zoological Sci 22:723–734.
Martindale MQ, Pang K, Finnerty JR. 2004.
Investigating the origins of triploblasty: ‘mesodermal’ gene expression in a diploblastic animal, the sea anemone Nematostella vectensis (phylum, Cnidaria; class, Anthozoa).
Development 131:2463–2474.
中胚葉の特定に必要な遺伝子調節ネットワークのオーソログを,中胚葉がないとされる刺胞動物で同定 (< Donoghue et al. 08).
Meulemans D & Bronner-Fraser M 2004
Gene-regulatory interactions in neural crest evolution and development. Dev. Cell 7(3):291-299.
総説.神経堤を発達させる遺伝性制御ネットワークの概要を示し,脊椎動物と頭索動物で比較 (Fig. 1).外胚葉のパターン化は保持されているが,その後の神経板境界で生じる神経堤特定化因子の活性は脊椎動物で新たに得られたらしい.この違いは,遺伝経路のコプションを反映すると推測,
神経堤やプラコードの分化を制御する転写因子やシグナル分子の相同遺伝子を,ホヤとナメクジウオから単離.神経堤遺伝子調節ネットワーク (NC-GRN) を提唱 (< Yu 10).
神経堤には神経管と表皮の境界から脱上皮化して移動するという,特異的な性質がある.ホヤやナメクジウオには,このような移動性の細胞は認められないと考えられていた (< Wada & Kuratani 07).
Jeffery, W.R., Strickler, A.G., and Yamamoto, Y. 2004.
Migratory neural crest-like cells form body pigmentation in a urochordate embryo.
Nature 431: 696–699.
神経堤細胞とよく似た移動生の細胞を,カリブ海産のホヤ Ecteinascidia turbinata で発見 (<Wada & Kuratani 07).この細胞は,脳と表皮の間に生じ,移動して色素細胞に分化する (< Kusakabe 09).この事実は神経堤細胞の進化的起源を考えるうえで,興味深い (<西田&西駕07).
E. turbinata の幼生は巨大で,カタユウレイボヤやマボヤと違って変態を始める前に幼生の体の中に成体器官がつくられる.細胞表面の HNK-1 という糖鎖抗原は神経堤細胞の指標とされ,E. turbinata の移動性細胞にも HNK-1 抗原がある.HNK-1 幼生の移動性の細胞は他種のホヤにも存在し,やはり色素細胞に分化.神経堤細胞は祖先生物では体表の色素細胞を形成するのに働いていたが,そののち,自律神経系や骨格などさまざまな組織へと分化する能力を獲得したことが,脊椎動物の進化に大きや役割を果たしたかもしれない (<Kusakabe 09, P184).
Stone JR, Hall BK. 2004.
Latent homologues for the neural crest as an evolutionary novelty. Evol Develop 6:123–129.
神経堤とこれに関わる細胞が出現した系統的位置を,deuterostomes の系統樹上にマップ (Fig. 1).
Mazet F. Shimeld SM. 2002
The Evolution of Chordate Neural Segmentation. Developmental Biology 251, 258–270.
末梢神経系に少しだけ寄与する神経堤とプラコードの原基的前駆体が,原索動物に存在 (<Feinberg & Mallatt 17).FoxB の遺伝子系統樹 (Fig. 2).
Wada H. 2001.
Origin and evolution of the neural crest: a hypothetical reconstruction of its evolutionary history. Development, Growth and Differentiation 43, 509-520.
総説.神経堤の起源.ホヤ神経管の背側で Pax3/7 が,その背側表皮では BMP2/4, Dlx, Pax3/7 が発現 (<西田&西駕07).
Hall, B.K., 2000.
The neural crest as a fourth germ layer and vertebrates as quadroblastic not triploblastic. Evolution and Development 2, 3–5.
Manzanares, M. Wada, H. Itasaki, N. Trainor, P. A. Krumlauf, R. Holland, P. W. H.. (2000)
Conservation and elaboration of Hox gene regulation during evolution of the vertebrate head. Nature 408(6814):854-857.
ナメクジウオでは神経堤細胞はないが,神経堤細胞での転写を制御する配列がすでに準備されていると示唆.それまで利用されなかったものが利用されるようになり,発生の機構が大きく変わる,という進化の仕組みを垣間見るストーリー.
ナメクジウオと神経堤細胞との関係を示唆する Hox 遺伝子を研究.脊椎動物では,菱脳のレベルで神経堤細胞が背側からこぼれ出したのち,その細胞で Hox 遺伝子が発現することが知られる.ナメクジウオの Hox 遺伝子,AmphiHox1 と AmphiHox3 遺伝子の近傍配列を LacZ につないだレポーターコンストラクトを,ニワトリ胚やマウス胚に導入すると,ロンボメアや神経堤細胞で発現 (< 西田&西駕07).
Yokose T, Miyata T. 2000.
歯髄組織への挑戦. 日口健誌. 2000;21:232-6.
頭部の一部で見られる,外胚葉由来の神経堤細胞から分化する骨芽細胞いや軟骨芽細胞のことを sctomesenchymal cell (外胚葉性間葉細胞) と呼ぶ.本来ならば, 骨芽細胞や軟骨芽細胞は中胚葉に由来する (間葉系).
Baker CVH, Bronner-Fraser M. 1997.
The origins of the neural crest. Part II: an evolutionary perspective. Mechanisms of Development 69:13–29.
総説.神経堤の進化的起源.成体や幼生の形態を図示して比較.
Wrischnik LA, Kenyon CJ (1997)
The role of lin-22, a hairy/enhancer of split homolog, in patterning the peripheral nervous system of C. elegans. Development 124:2875–2888.
脊椎動物の神経板境界と神経堤とは異なり,センチュウの側方神経芽細胞が特定される分子メカニズムは知られていない (<Li17, E6356右下).
Gans C, Northcutt RG. 1983.
Neural crest and the origin of the vertebrates: a new head. Science 220:268–274.
脊椎動物頭部の進化における神経堤とプラコードの重要性について述べた古典的な論文.
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Li Y, Zhao D, Horie T, Chen G, Bao H, Chen S, et al. 2017.
Conserved gene regulatory module specifies lateral neural borders across bilaterians. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017;114:E6352-E60.日本語.
感覚神経細胞を作り出すメカニズムが,左右相称動物全体にわたって保存されていると示唆.無脊椎動物でも,感覚神経前駆細胞は,中枢神経系前駆細胞の隣に位置することは知られていたが,左右相称動物全体にわたって同じメカニズムで発生が制御されるか不明であった.脊椎動物では,感覚神経細胞は,神経板と表皮の境界領域 (神経板境界領域) に由来する神経堤細胞とプラコードから作られる.
無脊椎動物で,神経堤細胞とその遺伝子回路の起源を探索.センチュウの感覚神経細胞の分化には,ともに Msx/Vab-15 遺伝子が必要不可欠なことを観察.この遺伝子は,脊椎動物において,側方の神経板境界領域の特異化や形成に重要なことが知られていた.一方で Pax3/7/pax-3 と Zic/ref-2 はセンチュウでは感けく神経細胞つの特定に関わっていなかった (E6357左中).以上はは,すべての動物の感覚神経細胞の分化に Msx/Vab-15 遺伝子が必要不可欠であることを示唆する.脊索動物は,末梢神経系を進化させる過程で,祖先生物が持っていた神経芽細胞の遺伝子ネットワークを構成するモジュールを獲得した,と提案.
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Morikawa, K., Tsuneki, K., and Ito, K. 2001.
Expression patterns of HNK-1 carbohydrate and serotonin in sea urchin, amphioxus, and lamprey, with reference to the possible evolutionary origin of the neural crest. Zoology 104: 81–90.
神経冠細胞の起源を示唆するものとして,この細胞に特有な膜抗原である HNK-1 がウニのプルテウス妖精の繊毛体に存在すると指摘 (Wada, M. 17, P168).
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Oulion S, Bertrand S, Escriva H. 2012.
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FGF 遺伝子の進化史を脊索動物 (Fig. 3) eumetazoans (Fig. 5) の系統樹にマッピング.
Monsoro-Burq, A.H., Wang, E., Harland, R., 2005.
Msx1 and Pax3 cooperate to mediate FGF8 and WNT signals during Xenopus neural crest induction. Dev. Cell 8, 167–178.
Monsoro-Burq, A.H., Fletcher, R.B., Harland, R.M., 2003.
Neural crest induction by paraxial mesoderm in Xenopus embryos requires FGF signals. Development 130, 3111–3124.
Co-injection of BMP antagonists with molecules such as Wnts (Wnt7b or Wnt8), fibroblast growth factors (eFGF or bFGF) or retinoic acid (RA) results in strong neural crest formation in ectodermal explants (animal caps).
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Simoes-Costa M, Stone M, & Bronner ME 2015
Axud1 Integrates Wnt Signaling and Transcriptional Inputs to Drive Neural Crest Formation. Dev. Cell 34(5):544-554.
Monsoro-Burq, A.H., Wang, E., Harland, R., 2005.
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Monsoro-Burq, A.H., Fletcher, R.B., Harland, R.M., 2003.
Neural crest induction by paraxial mesoderm in Xenopus embryos requires FGF signals. Development 130, 3111–3124.
Co-injection of BMP antagonists with molecules such as Wnts (Wnt7b or Wnt8), fibroblast growth factors (eFGF or bFGF) or retinoic acid (RA) results in strong neural crest formation in ectodermal explants (animal caps)
Garcia-Castro, M.I., Marcelle, C., Bronner-Fraser, M., 2002.
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Characterization of amphioxus AmphiWnt8: insights into the evolution of patterning of the embryonic dorsoventral axis. Evol. Dev. 2, 85–92.
AmphiWnt8 of Branchiostoma floridae (AF190470).Wnt 遺伝子系統樹 (Fig. 3).
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Minguillon et al. 03.
The amphioxus Hairy family: differential fate after duplication.
ナメクジウオ Hairy 遺伝子 (AY349473) 系統樹 (Fig. 1).
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BMP2/4
ホヤ・背側表皮.Bmp シグナルが神経堤細胞の成立に重要.
Mizutani, C.M., Meyer, N., Roelink, H., Bier, E., 2006.
Threshold-dependent BMP mediated repression: a model for a conserved mechanism that patterns the neuroectoderm. PLoS Biol. 4, e313.
McCauley, D. W. & Bronner-Fraser, M. 2004.
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BMP の遺伝子系統樹 (Fig. 2).
Sela-Donenfeld, D., Kalcheim, C., 1999.
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Panopoulou, G.D., Clark, M.D., Holland, L.Z., Lehrach, H., Holland, N.D., 1998.
AmphiBMP2/4, an amphioxus bone morphogenetic protein closely related to Drosophila decapentaplegic and vertebrate BMP2 and BMP4: insights into evolution of dorsoventral axis specification. Dev. Dyn. 213, 130–139.
AmphiBMP2/4 (AF068750) の遺伝子系統樹 (Fig. 4).ナメクジウオ神経板付近の発生を図示 (Fig. 1).
Liem Jr., K.F., Tremml, G., Roelink, H., Jessell, T.M., 1995.
Dorsal differentiation of neural plate cells induced by BMP-mediated signals from epidermal ectoderm. Cell 82, 969–979.
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神経堤の分化.原索動物の背側正中の表皮には発現しない.
Li Y, Zhao D, Horie T, Chen G, Bao H, Chen S, et al. 2017.
Conserved gene regulatory module specifies lateral neural borders across bilaterians. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017;114:E6352-E60.日本語.
センチュウの感覚神経細胞の分化には,ともに Msx/Vab-15 遺伝子が必要不可欠なことを観察.一方で Pax3/7/pax-3 と Zic/ref-2 はセンチュウでは感けく神経細胞つの特定に関わっていなかった (E6357左中).
Aruga J, Odaka YS, Kamiya A, Furuya H. 2007.
Dicyema Pax6 and Zic: tool-kit genes in a highly simplified bilaterian. BMC Evol Biol. 7:201.
ニハイチュウ論文.Zic の左右相称動物・遺伝子系統樹 (Fig. 6).
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Zic の遺伝子系統樹 (Fig. 3).
Sato, T., Sasai, N., Sasai, Y., 2005.
Neural crest determination by co-activation of Pax3 and Zic1 genes in Xenopus ectoderm. Development 132, 2355–2363.日本語解説.
神経堤の誘導開始には Pax3 および Zic1 の共発現が決定的や役割を担う.
Gostling, N.J., Shimeld, S.M., 2003.
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Zic 遺伝子系統樹 (Fig. 2).AmphiZic (AJ252245). CiZic/Ci-macho1
Mizuseki, K., Kishi, M., Matsui, M., Nakanishi, S., Sasai, Y., 1998.
Xenopus Zic-related-1 and Sox-2, two factors induced by chordin, have distinct activities in the initiation of neural induction. Development 125, 579–587.
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神経堤の分化を制御.ホヤ・神経管の背側.背側表皮.
Li Y, Zhao D, Horie T, Chen G, Bao H, Chen S, et al. 2017.
Conserved gene regulatory module specifies lateral neural borders across bilaterians. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017;114:E6352-E60.日本語.
センチュウの感覚神経細胞の分化には,ともに Msx/Vab-15 遺伝子が必要不可欠なことを観察.一方で Pax3/7/pax-3 と Zic/ref-2 はセンチュウでは感けく神経細胞つの特定に関わっていなかった (E6357左中).
Thompson KW, et al. (2016)
The paired-box protein PAX-3 regulates the choice between lateral and ventral epidermal cell fates in C. elegans. Dev Biol 412:191–207.
脊椎動物の神経板境界と神経堤とは異なり,センチュウの側方神経芽細胞が特定される分子メカニズムは知られていない (<Li17, E6356右下).
Monsoro-Burq, A.H., Wang, E., Harland, R., 2005.
Msx1 and Pax3 cooperate to mediate FGF8 and WNT signals during Xenopus neural crest induction. Dev. Cell 8, 167–178.
Sato, T., Sasai, N., Sasai, Y., 2005.
Neural crest determination by co-activation of Pax3 and Zic1 genes in Xenopus ectoderm. Development 132, 2355–2363.
Holland, L.Z., Schubert, M., Kozmik, Z., Holland, N.D., 1999.
AmphiPax3/7, an amphioxus paired box gene: insights into chordate myogenesis, neurogenesis, and the possible evolutionary precursor of definitive vertebrate neural crest.
Evol. Dev. 1, 153–165.
Branchiostoma floridae, AmphiPax3/7 遺伝子 (AF165886).Pax3/7 の遺伝子系統樹 (Fig. 4).
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ディスタルレス Distal-less 遺伝子 (ENSG00000144355).
神経堤の分化を制御.ホヤ・背側表皮
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Amphioxus and lamprey AP-2 genes: implications for neural crest evolution and migration patterns. Development 129, 4953–4962.
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Homo-sapiens_ENSP00000245479.2_SRY-box-9 <= Homo-sapiens_SOX9-201
FBpp0085097 Sox100B (Cossais et al. 10)
Tai A, et al. (2016)
SOXE neofunctionalization and elaboration of the neural crest during chordate evolution. Sci Rep 6:34964.
AmphiSoxE の神経版境界での発現が,神経堤の出現を導いたと提唱.一方で,重複と多様化が,脊椎動物のパラログで有利な変異を生じ,神経堤の特徴形成を促進したとする.
脊椎動物にある SoxE のパラログ Sox9/10 は,どれも類似した DNA 結合部位やホモ二量体化特性を持っていた.SoxE パラログは,神経堤の誘導,脱上皮化,系統特化に重要.一方で頭索動物に SoxE は一つしかない.
脊索動物 SoxE の遺伝子系統樹 (Fig. 1).脊椎動物根幹で生じた全ゲノム重複に由来するパラログは新規機能を獲得し,頭顔構造と末端神経系の発達に寄与したと考えられている.
脊椎動物にある 5 つの FoxD パラログのうち,FoxD3
だけが神経堤で発現する.FoxD は,全ゲノム重複のあと,他の神経堤特定因子よりもやや遅れてリクルートされただろう (P8中).
Jandzik, D. et al. 2015.
Evolution of the new vertebrate head by co-option of an ancient chordate skeletal tissue. Nature 518, 534–537 (2015).
コオプションイベントが,AmphiSoxE 遺伝子の神経堤 cis-調節配列の獲得を促進した.新たな cis-調節領域配列が進化することで,神経堤細胞で SoxE が発現するようになった (< Tail et al. 16). 軟骨分化を調節していた領域近くにあったシス調節因子の進化が,脊椎動物頭部骨格が獲得された主要因と提案.
Martik ML & McClay DR (2015)
Deployment of a retinal determination gene network drives directed cell migration in the sea urchin embryo. Elife 4.
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Sox10 遺伝子は単独で,線維芽細胞を神経堤細胞にリプログラムできる.このことは神経堤の特化に SoxE 遺伝子が重要であることを意味する (< Green et al 15).iPS 論文を引用.
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Balanoglossus simodensis (シモダギボシムシ) SoxE 遺伝子配列 (BAK69337).神経システムを protostomes, hemichordates, chordates 間で比較 (Fig. 5).
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FoxD3 とは異なり,SoxE には神経堤の発達に特化したモチーフはないだろう.神経堤細胞の分化に際し,Drosophila SoxE は脊椎動物 SoxE と機能的に交換可能である (< Ono et al 14).
Betancur P, Bronner-Fraser M, & Sauka-Spengler T 2010
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Ets-1 は有顎類の頭部神経堤特定に必須 (< Green et al. 15).
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SoxE 遺伝子は,神経堤にコオプトされ,脊椎動物根幹でパラログが分岐する以前は原始的な役割を担っていたと示唆.
動物進化の初期に出現した SoxE 遺伝子は,脊椎動物全ゲノム重複でコピーが生じるまで単一コピーであった.Sox E は,ナメクジウオでは神経堤の形成に関わらない一方,ヤツメウナギでは外胚葉性間葉細胞・神経堤派生細胞の発達に関与 (P538左).
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転写因子の進化.SoxE グループは動物でも起源が古い (< Donoghue et al. 08).SoxE 遺伝子系統樹 (Fig. 6).
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Phylogenetic analysis of Ciona intestinalis gene superfamilies supports the hypothesis of successive gene expansions. J. Mol. Evol. 58(2):168-181.
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AmphiSox1/2/3 と AmphiNeurogenin. Neurogenin と neuroD タンパク質の遺伝子系統樹 (Fig. 7). 神経板のないウニであっても,Sox1/2/3 と BMP2/4 ホモログは軸パターン形成に役割を担うと示唆 (P30左).
Kenny, A. P., Kozlowski, D., Oleksy, D. W., Angerer, L. M., and Angerer, R. C. (1999). SpSoxB1, a maternally encoded transcription factor asymmetrically distributed among early sea urchin blastomeres. Development 126, 5473–5483.
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Xenopus Zic-related-1 and Sox-2, two factors induced by chordin, have distinct activities in the initiation of neural induction. Development 125, 579–587.
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神経堤の分化.原索動物の背側正中の表皮には発現しない.脊椎動物の初期神経堤細胞で発現.ホヤでは,発生過程で神経板の縁で発現.
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FGF signaling induces mesoderm in the hemichordate Saccoglossus kowalevskii. Development 140, 1024–1033.
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ナメクジウオ FoxD の発現部位 (Fig. 3).
Fritzenwanker JH, Gerhart J, Freeman RM, Jr., & Lowe CJ (2014)
The Fox/Forkhead transcription factor family of the hemichordate Saccoglossus kowalevskii. Evodevo 5:17.
Saccoglossus kowalevskii FoxD 遺伝子配列 (ADB22668).Fox 遺伝子系統樹 (Fig. 1) と発現部位 (Fig. 2, 6).後腸 (hindgut) で共通して発現することから,FoxD はすでに deuterostomes の祖先の後腸で発現していたと指摘 (Fig. 6).
Ono H, Kozmik Z, Yu JK, & Wada H (2014)
A novel N-terminal motif is responsible for the evolution of neural crest-specific gene-regulatory activity in vertebrate FoxD3. Dev. Biol. 385(2):396-404.
脊椎動物 FoxD3 遺伝子の N 末端領域にある特徴的なモチーフが,FoxD3 遺伝子が脊椎動物・神経堤 GRN に編入するために重要であったと示唆.神経堤とタンパク質配列の分子進化を結ぶ証拠を初めて提示.
ナメクジウオ Fox とカエルFoxD3 遺伝子の転写抑制作用を,ニワトリ胚で比較.カエル FoxD3 は神経堤細胞を誘導したが,ナメクジウオ Fox 遺伝子や他の脊椎動物 Fox パラログは標的部位に結合したものの誘導はしなかった.
神経堤 GRN の進化を二段系に分けて考察.一段階目は,neural crest specifiers のリクルート.神経堤 GRN は neural plate border specifiers と NCC specifiers に分けられるため,神経堤 GRN は段階を経て進化したように見える.
border specifiers は,脊椎動物と同様に原索動物でも神経・非神経外胚葉部位で発現するため,NCC GRN に組み込まれた際に発現部位は変化しなかったと示唆.このため border specifiers は,後に neural crest specifiers となる遺伝子を下流にリクルートする必要があった.これら neural crest specifiers が神経堤 GRN に組み込まれた時期は異なるとと考察.FoxD3 以外の neural crest specifiers (SoxE, snail/slug, AP-2) ではパラログも神経堤で発現するため,FoxD3 は WGD 後に,それ以外は WGD 前に神経堤 GRN に組み込まれたと示唆.
二段系目はカドヘリンやコラーゲン遺伝子など,neural crest specifiers にとってのtarget effector genes の獲得.
これら effector genes は WGD によってコピーされたが,いくつかの遺伝子 (cadherin6, cadherin7, col2a1, rhoB) はパラログの一部だけが神経堤 GRN に組み込まれた.これらの target genes が WGD 後に組み込まれたことで,神経堤 GRN は完成したと指摘.
Simões-Costa, M. S., McKeown, S. J., Tan-Cabugao, J., Sauka-Spengler, T. & Bronner, M. E. 2012.
Dynamic and differential regulation of stem cell factor FoxD3 in the neural crest is encrypted in the genome. PLoS Genet. 8, e1003142.
FoxD3 遺伝子の上流に,FoxD3 の発現を時空間的に変化させるエンハンサーあるいはスイッチ配列である NC1 と NC2 を発見.Pax と Msx タンパク質がこれらの領域に結合することで,発現に関わる.
Shimeld SM, Boyle MJ, Brunet T, Luke GN, & Seaver EC (2010)
Clustered Fox genes in lophotrochozoans and the evolution of the bilaterian Fox gene cluster. Dev. Biol. 340(2):234-248.
染色体領域で形成されるいくつかの Fox 遺伝子クラスター群が,これまで調べられていなかった冠輪動物でも見られると指摘.冠輪動物の Fox 遺伝子系統樹に発現部位をマッピングして進化を考察 (Fig. 12).Fox 遺伝子系統樹 (Fig. 1).
Shimeld SM, Degnan B, & Luke GN (2010)
Evolutionary genomics of the Fox genes: origin of gene families and the ancestry of gene clusters. Genomics 95(5):256-260.
FoxD と FoxE 遺伝子が左右相称動物の祖先で生じた tandem 遺伝子重複に由来する可能性を示す (P259左中).左右相称動物を中心とした動物の系統樹に, Fox 遺伝子ホモログの有無をマッピング (Fig. 1).
Ignatius, M. S., Moose, H. E., El-Hodiri, H. M., & Henion, P. D. (2008).
Colgate/hdac1 repression of foxd3 expression is required to permit mitfa-dependent melanogenesis. Developmental Biology, 313(2), 568–583.
Larroux C, Luke GN, Koopman P, Rokhsar DS, Shimeld SM, Degnan BM. 2008.
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転写因子の進化.後生動物の祖先ゲノムでは,遺伝子数が少なかったと指摘.海綿と襟鞭毛虫と多細胞動物のゲノムデータを比較から FoxD (Fig. 4D) を含む転写因子数種の遺伝子系統樹を推定.
Teng, L., Mundell, N.A., Frist, A.Y., Wang, Q., Labosky, P.A., 2008.
Requirement for FoxD3 in the maintenance of neural crest progenitors. Development 135,
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Insights from the amphioxus genome on the origin of vertebrate neural crest. Genome Research, 18(7), 1127–1132.
Amphioxus FoxD 遺伝子の調節領域をニワトリに導入すると,従来通り体節,脊索,神経管の発現は誘導可能だが,神経堤の発現は誘導せず.FoxD 遺伝子が神経堤・遺伝子調節ネットワークのメンバーになり神経堤を誘導するには,進化が必要なことを示唆 (<Munoz & Trainor 15).
ナメクジウオでは,脊椎動物・神経堤特定遺伝子のホモログは存在するが,
AmphiSnail 以外は,神経板境界領域で発現しない (< Tai et al 16).
AmphiFoxD 調節因子がニワトリの体節での発現を推進できるが,神経堤での発現は促進できないことを示す.このことは,AmphiFoxD が神経堤 GRN に組み込まれるには,新しい調節因子が必要なことを示唆する (< Green et al. 15).
Montero-Balaguer, M., Lang, M.R., Sachdev, S.W., Knappmeyer, C., Stewart, R.A., De
La Guardia, A., Hatzopoulos, A.K., Knapik, E.W., 2006.
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Zebrafish FoxD3 is required for development of a subset of neural crest derivatives. Dev. Biol. 290, 92–104.
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Zebrafish FoxD3 is selectively required for neural crest specification, migration and survival. Dev. Biol. 292, 174–188.
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ウニの Fox 遺伝子配列 (ABB89476) とその系統樹 (Figs.1, 2).
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Temporal and spatial expression patterns of FoxD2 during the early development of Xenopus laevis. Mech. Dev. 111, 181–184.
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An amphioxus winged helix/forkhead gene, AmphiFoxD: insights into vertebrate neural crest evolution. Dev. Dyn. 225, 289–297.
Branchiostoma floridae の FoxD, AmphiFoxD 遺伝子配列 (AF512537). FoxD subclass の遺伝子系統樹を図示 (Fig. 5).
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The winged-helix transcription factor FoxD3 is important for establishing the neural crest
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The winged helix transcription factor Hfh2 is expressed in neural crest and spinal cord during mouse development. Mech. Dev. 76, 185–190.
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Id expression in amphioxus and lamprey highlights the role of gene cooption during neural crest evolution. Dev. Bio. 264, 430–442.
Id 遺伝子系統樹 (Fig. 1B).
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The protooncogene c-myc is an essential regulator of neural crest formation in Xenopus. Dev. Cell 4, 827–839.
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Twist の遺伝子系統樹 (Fig. 1). Cs-Mist.Cs-Hex.
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Msx2 and Twist cooperatively control the development of the neural crest-derived skeletogenic mesenchyme of the murine skull vault. Development 130, 6131–6142.
Soo, K., O’Rourke, M.P., Khoo, P.L., Steiner, K.A., Wong, N., Behringer, R.R., Tam, P.P.,
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Expression of a twist-related gene, Bbtwist, during the development of a lancelet species and its relation to cephalochordate anterior structures. Dev Biol. 1998;195:49-59.
Twist の遺伝子系統樹 (Fig. 2).
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神経堤の脱上皮化に関与.Rho 3 コピー (rhoA, rhoB, rhoC) の祖先的な遺伝子をホヤは待つ.Gタンパク質をコード.神経堤細胞で特異的に発現.
Jeffery, W.R., Chiba, T., Krajka, F.R., Deyts, C., Satoh, N., Joly, J.S., 2008.
Trunk lateral cells are neural crest-like cells in the ascidian Ciona intestinalis: insights into the ancestry and evolution of the neural crest. Dev. Biol. 324, 152–160.
Ciona の神経堤 GRN を図示 (Fig. 6).
Wada,H. and Makabe,K. 2006.
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AB262074
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さまざまな局面で細胞骨格の校正を制御している低分子量 G タンパク質,RhoB,も神経堤の脱上皮化に不可欠である (<Wada & Kuratani 07).
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cadherin6B
神経堤の脱上皮化に関与.脱上皮化前に発現.
cadherin7
神経堤の脱上皮化に関与.移動開始後に発現.
cadherin11
神経堤の脱上皮化に関与.移動開始後に発現.
Taneyhill LA, Coles EG, Bronner-Fraser M. 2007.
Snail2 directly represses cadherin6B during epithelial-to-mesenchymal transitions of the neural crest. Development. 134:1481-90.
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Nakagawa S, Takeichi M. 1995.
Neural crest cell-cell adhesion controlled by sequential and subpopulation-specific expression of novel cadherins. Development. 1995;121:1321-32.
神経堤細胞の移動に関わる分子を同定.神経堤細胞の脱上皮化の前後で,細胞接着分子として発現する遺伝子が入れ替わる脱上皮化の前には cadherin6B が,移動を始めると cadherin7 や cadherin11 が発現する (< Wada & Kuratani 07).
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Meulemans D, Bronner-Fraser M. 2007.
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Zhang GJ, Cohn MJ. 2006.
Hagfish and lancelet fibrillar collagens reveal that type II collagen-based cartilage evolved in stem vertebrates. Proc Natl Acad Sci U S A.103:16829-33.
ナメクジウオ (AmphiColA, DQ647925) とヌタウナギ (Col21, DQ647926) の Col 遺伝子とその系統樹 (Fig. 1).Type II コラーゲンに基づく軟骨の起源を系統樹上で推定 (Fig. 4).
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Donoghue PC, Graham A, & Kelsh RN (2008)
The origin and evolution of the neural crest. Bioessays 30(6):530-541.
脊椎動物・メラニン形成 GRN の主要要素は原索動物に存在し,中枢神経系の発達に組み込まれたと示唆 (P538右上).
Yajima L, Endo K, Sato S, Toyoda R, Wada H, et al. 2003.
Cloning and functional analysis of ascidian Mitf in vivo: insights intothe origin of vertebrate pigment cells. Mech Develop 120:1489–1504.
Mitf 遺伝子系統樹 (Fig. 2).マボヤの Mitf 遺伝子配列 (HrMitf AB042263).
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Sato S, Toyoda R, Katsuyama Y, Saiga H, Numakunai T, Ikeo K, et al. 1999.
Structure and developmental expression of the ascidian TRP gene: insights into the evolution of pigment cell-specific gene expression. Dev Dyn. 1999;215:225-37.
Trp の遺伝子系統樹 (Fig. 7).HrTRP (D63949).
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Lang, D., and Epstein, J.A. (2003).
Sox10 and Pax3 physically inter- act to mediate activation of a conserved c-RET enhancer. Hum. Mol. Genet. 12, 937–945.
Lang D, Chen F, Milewski R, Li J, Lu MM, Epstein JA. 2000.
Pax3 is required for enteric ganglia formation and functions with Sox10 to modulate expression of c-ret. J Clin Invest. 06:963-71.
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Li Y, Zhao D, Horie T, Chen G, Bao H, Chen S, et al. 2017.
Conserved gene regulatory module specifies lateral neural borders across bilaterians. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017;114:E6352-E60.日本語.
感覚神経細胞を作り出すメカニズムが,左右相称動物全体にわたって保存されていると示唆.無脊椎動物でも,感覚神経前駆細胞は,中枢神経系前駆細胞の隣に位置することは知られていたが,左右相称動物全体にわたって同じメカニズムで発生が制御されるか不明であった.脊椎動物では,感覚神経細胞は,神経板と表皮の境界領域 (神経板境界領域) に由来する神経堤細胞とプラコードから作られる.
無脊椎動物で,神経堤細胞とその遺伝子回路の起源を探索.線虫の感覚神経細胞の分化には,ともに Msx/Vab-15 遺伝子が必要不可欠なことを観察.この遺伝子は,脊椎動物において,側方の神経板境界領域の特異化や形成に重要なことが知られていた.このことは,すべての動物の感覚神経細胞の分化に Msx/Vab-15 遺伝子が必要不可欠であることを示唆する.脊索動物は,末梢神経系を進化させる過程で,祖先生物が持っていた神経芽細胞の遺伝子ネットワークを構成するモジュールを獲得した,と提案.
Waki K, Imai KS, & Satou Y (2015)
Genetic pathways for differentiation of the peripheral nervous system in ascidians. Nat Commun 6:8719.
脊椎動物の感覚神経は,無脊椎動物のものをそのまま進化させたのではなく,改めて移植して発展させたものと主張.背側と腹側の感覚神経を作り出す遺伝子回路を詳細に検討.背側と腹側の感覚神経は,Msx という共通した遺伝子によって感覚神経を作る遺伝子回路が動き出すことで形成されることを発見.
ホヤ幼生尾部の背側と腹側に感覚神経が分化する.背側の神経は脊椎動物と同様に神経版の境界領域にある細胞から作られ,腹側の神経は他の無脊椎動物と同様に表皮の中から分化する.
Monsoro-Burq, A.H., Wang, E., Harland, R., 2005.
Msx1 and Pax3 cooperate to mediate FGF8 and WNT signals during Xenopus neural crest induction. Dev. Cell 8, 167–178.
Ishii, M., Merrill, A.E., Chan, Y.S., Gitelman, I., Rice, D.P., Sucov, H.M., Maxson Jr.,
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Msx2 and Twist cooperatively control the development of the neural crest-derived skeletogenic mesenchyme of the murine skull vault. Development 130, 6131–6142.
Sharman AC, Shimeld SM, Holland PWH (1999)
An amphioxus Msx gene expressed predominantly in the dorsal neural tube. Dev GenesEvol 209: 260–263.
ナメクジウオは神経堤を持たない.しかし,神経管の類似した部分に Msx 相同遺伝子が発現する.Amphi-Msx 遺伝子 (AJ130766).
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Li Y, Zhao D, Horie T, Chen G, Bao H, Chen S, et al. 2017.
Conserved gene regulatory module specifies lateral neural borders across bilaterians. Proc Natl Acad Sci U S A. 2017;114:E6352-E60.日本語.
We also identify a novel lateral neural border specifier, ZNF703/tlp-1, which functions synergistically with Msx/vab-15 in both C. elegans and Xenopus laevis.
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Schlosser G (2017)
From so simple a beginning – what amphioxus can teach us about placode evolution. Int. J. Dev. Biol. 61:633-648.
総説.ナメクジウオと比較することで頭部プラコードの進化的起源を探る.ナメクジウオにプラコードはないが,脊椎動物のプラコード発生に重要な内胚葉のパターン化メカニズムや細胞に類似点がある.神経堤同様,脊椎動物に特有な頭部プラコードも,GRN の再配線で生まれた.系統樹にプラコードの祖先状態と関連する遺伝子をマッピングし,脊索動物内部でのプラコード進化を推定 (Fig. 6).
Abitua, P.B., Gainous, T.B., Kaczmarczyk, A.N., Winchell, C.J., Hudson, C., Kamata, K., Nakagawa, M., Tsuda, M., Kusakabe, T.G., Levine, M., 2015.
The pre-vertebrate origins of neurogenic placodes. Nature 524, 462–465.
尾索動物に頭部の原型を見出した.脊椎動物を,尾索動物など他の動物と区別する上で明瞭な特徴は,眼・耳・鼻といった特殊な感覚器官を備えた頭部の存在とされていた.
C. intestinalis に,脊椎動物の特殊な感覚器官の基盤を作る神経プラコードと相同な遺伝的要素の存在を提示.本種にも,プラコード相同の構造が発生し,遺伝子の発現や誘導に必要なシグナルも共通することを示す.その上で,このプラコードを形成する前駆細胞が,性ホルモンを分泌し,化学物質を感知する両方の性質を持った繊毛を持つ神経細胞へと分化することを発見.脊椎動物では,プラコードから分化する神経細胞は,ホルモン分泌性の脳下垂体神経と,匂いを感知する嗅細胞へと分かれるため,今回 C. intestinalis で発見されたホルモン分泌・感覚細胞は,機能が分化する以前の起源細胞と示唆.元は一つの細胞で行われていたホルモン分泌と感覚機能が,脊椎動物では異なる細胞に担当が分離したことで,より複雑な機能の獲得につながったと考察 (< AASJ 15).
C. intestinalis には,原子プラコード外胚葉 (PPE, proto-placode ectoderm) が存在.PPE の発達には BMP 阻害が必要.さらにPPE は,鍵となる調節的決定因子である Six1/2 とその共同因子 Eya を発現する.このプロセスは脊椎動物で保存されている (< Satoh, 16).
GPCP (G-protein-coupled receptor, G タンパク質共役受容体) の系統樹 (Fig. S6).
Diogo R, et al. (2015)
A new heart for a new head in vertebrate cardiopharyngeal evolution. Nature 520(7548):466-473.
総説.脊椎動物の頭部は,神経堤とプラコードの出現によって得られた.神経堤は頭蓋骨と関連の結合組織,プラコードは感覚器をつくる.しかし両者は頭の筋肉を作ることができない.この論文では,頭と心臓の筋肉が関連している,という最近の報告を議論.
プラコードには,脊椎動物の出現前と後に獲得されたものがある (P468左下).
脊索動物 3 系統間で placode (プラコード) と branchiomeric muscle (鰓弓筋) の相同器官を図示 (Fig. 4).
Schlosser G. 2015.
Vertebrate cranial placodes as evolutionary innovations--the ancestor's tale. Curr Top Dev Biol. 2015;111:235-300.
総説.頭部プラコードの起源を,動物門の系統関係に沿って分類群ごとに考察.頭部プラコードは,外胚葉パターン形成 (ectodermal patterning) と神経分泌細胞と感覚細胞 (neurosecretory and sensory cell types) をいじくりまわすことで進化してきた.
外胚葉パターン形成と神経分泌細胞と感覚細胞 の分化の中心をなすネットワーク (BMP- と Wnt- に依存するパターン化) は,刺胞動物と左右相称動物の共通祖先にすでに存在し,左右相称動物の祖先で精巧になった.そして,いくつかの神経分泌細胞と感覚細胞を生じる前方と後方の前プラコード領域は,脊索動物の祖先か,尾索類-脊椎動物・共通祖先の外胚葉で成立した.しかし,神経分泌細胞と感覚細胞の増殖につながる頭部プラコードは,脊椎動物の祖先で完成し多様化した.
下垂体前葉の神経分泌細胞型のいくつかを除き,プラコード由来の神経分泌,感覚,神経細胞は脊椎動物全体で共有される.このため脊椎動物の共通祖先は基本的なプラコードのセットを備えており,プラコードの出現と多様化に関わるイベントはそれ以前に生じたと示唆.従って,脊椎動物内部の比較では,プラコード進化の情報は得にくいとする (P251上).
ホヤに神経分泌細胞はあるが,脊椎動物の下垂体前葉ホルモンは,ホヤだけでなくナメクジウオや他の無脊椎動物のゲノムから見つかっていない.しかし,他の同じホルモンファミリーは,左右相称動物や後生動物にもある (P256下).
Patthey, C., Schlosser, G., Shimeld, S.M., 2014.
The evolutionary history of vertebrate cranial placodes–I: cell type evolution. Developmental Biology 389, 82–97.
総説シリーズ第一弾.
Schlosser G, Patthey C, & Shimeld SM (2014)
The evolutionary history of vertebrate cranial placodes II. Evolution of ectodermal patterning. Dev. Biol. 389(1):98-119.
総説シリーズ第二弾.プラコードの進化を動物の系統樹に詳細にマップ (Fig. 6).
Schlosser G (2014)
Development and evolution of vertebrate cranial placodes. Deleopmental Biology, 389, 1.
プラコード.
田中美千裕. 2014
系統発生から見た脳神経.Niche Neuro-Angiology Conference. web.
Graham A & Shimeld SM (2013)
The origin and evolution of the ectodermal placodes. J. Anat. 222(1):32–40.
総説.Deuterostomes の系統樹にプラコードの祖先状態をマップ (Fig. 4).
Schlosser, G.,2008.
Do vertebrate neural crest and cranial placodes have a common evolutionary origin? Bioessays30,659–672.
神経堤とプラコードは,共に神経板辺縁部の外胚葉に由来するが,分布と発達メカニズムが異なることから,進化的に起源が異なる.神経堤の進化的起源は,神経板の神経側に,プラコードの起源は非神経側にある.
Canestro, C., &Postlethwait, J. H. (2007).
Development of a chordate anterior-posterior axis without classical retinoic acid signaling. Developmental Biology, 305, 522–538.
レチノイン酸が,オタマボヤ・前後軸の決定に作用しているかを検証.レチノイン酸は,オタマボヤの homeotic posteriorization (頭索類や脊椎動物で見られるような) を生じないことを示す.このことは,レチノイン酸による古典的な形態形成の役割がなくても,脊索動物はファイロティピック体制を発達できることを意味する.レチノイン酸によって誘引される homeotic posteriorization の欠失は,他の尾索動物でも共通していた.
オタマボヤではレチノイン酸シグナル経路を構成する遺伝子がないと考えられていた.レチノイン酸による発生シグナルは,脊索動物・体制の起源に重要な新機軸と考えられていた.オタマボヤは生涯を通じて脊椎動物・体制を保つがレチノイン酸の合成,分解,受理の遺伝子を失っていると考えられていた.
Mazet, F., Hutt, J.A., Milloz, J., Millard, J., Graham, A., Shimeld, S.M., 2005.
Molecular evidence from Ciona intestinalis for the evolutionary origin of vertebrate sensory placodes. Developmental Biology 282, 494–508.
脊椎動物プラコードの発達に重要な Six-1/2, Eya, Pax-2/5/8 などの転写調節因子が,ホヤの入水管と出水管の原基でそろって働くと指摘.入水管や出水管には感覚細胞があり,また入水管原基と下垂体の間には発達過程の類似性が知られている.
ホヤの幼生は消化管が未発達で,消化管の入り口と出口,つまり口と肛門に相当する入水管と出水管は変態時に形成される.これらは,幼生の体内の頭部にある,プラコードに類似した原基に由来する.ホヤ成体にある入水管や出水管には感覚細胞があり,また入水管原基と下垂体の間には,発達過程の類似性が知られる.
脊椎動物では,Six-1/2, Eya (アイズ・アブセン), Pax-2/5/8 などの転写調節因子が揃って働くことがプラコードの発達に重要であることが知られていた (<Kusakabe 09, P184).
ナメクジウオとは対照的に,ホヤにプラコードに相同な器官があると多くの研究が示唆している (< Satoh 16).
Mazet, F. and Shimeld, S. M. (2005).
Molecular evidence from ascidians for the evolutionary origin of vertebrate cranial sensory placodes. J. Exp. Zool. B Mol. Dev. Evol. 304, 340-346.
総説.脊椎動物の頭部感覚プラコードの進化的起源をホヤ類に見出す.プラコードマーカー遺伝子のリスト (Table 1). ホヤの入水管と出水管の原基でも,Six-1/2, Eya, Pax-2/5/8 などの転写因子がそろって働いていることがわかった (<KusakabeT09, P184).
Shimeld, S.M., Holland, P.W.H., 2000.
Vertebrate innovations. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 97, 4449–4452.
Wada, H., Saiga, H., Satoh, N., Holland, P.W.H., 1998.
Tripartite organization of the ancestral chordate brain and the antiquity of placodes: insights from ascidian Pax-2/5/8, Hox and Otx genes. Development 125, 1113–1122.
神経管の領域化の様式が,脊椎動物と尾索動物の間で保存されていることを示す.
脊椎動物 Pax2/5/8 遺伝子のホヤオーソログは 1 遺伝子コピーと示唆 (HrPax-258, AB006675).Otx, Hox1 遺伝子のオーソログとともに,ホヤ胚での発現場所を in situ hybridization で示し,脊椎動物の前脳と相同な部位を推定.HrPax-258 の発現パターンはホヤに,脊椎動物に相同なプラコード由来の器官があると推定.このことは,プラコードは,脊椎動物の祖先で獲得されたのではなく,初期の脊索動物がすでに持っていたことを意味する.
タイトルの tripartite organization とは,
中枢神経系が,前方から Otx, Pax, Hox による領域化をうけて構成されることを意味する.
ホヤ Pax2/5/8 遺伝子 (脊椎動物・耳プラコードマーカーのオーソログである,Pax8 と Pax2) が心房原基で発現することを示す.両器官が相同であるという Jeffery の仮説を支持 (< Satoh 16).
Lacalli, T.C., Hou, S.F., 1999.
A reexamination of the epithelial sensory cells of amphioxus (Branchiostoma). Acta Zoologica 80, 125–134.
外胚葉性細胞は感覚ニューロンを形成すると示唆. しかし,これらの細胞が脊椎動物・プラコードに相同か疑問視.近年,ナメクジウオの外胚葉性細胞で,プラコードマーカー遺伝子 (Pitx, Eya, Six3/6, Six1/2, Six4/5, Pax6, Pax2/5/8) が検出. (< Satoh 16).
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プラコード発生で中心的な役割を担う:(1) 脊椎動物のプラコード全体で発現.(2) 前駆体増殖とプラコードでの細胞分化の両で重要.以前から,Siz1/2(and Six4/5) は,Eya 補因子とともに,プラコードの発生で重要な役割を演じると考えられてきた.さらに,GRN でのこれらの遺伝子の再配線が,プラコードに,進化的に顕著な特徴を生じたと示唆された.
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Eya (アイズ・アブセント).プラコード発生で中心的な役割を担う.
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Christiaen, L., Bourrat, F. & Joly, J. S. 2005.
A modular cis-regulatory system controls isoform-specific pitx expression in ascidian stomodaeum. Dev. Biol. 277, 557–566 (2005).
Boorman, C.J., Shimeld, S.M., 2002.
Pitx homeobox genes in Ciona and amphioxus show left-right asymmetry is a conserved chordate character and define the ascidian adenohypophysis. Evolution and Development 4, 354–365.
ホヤ oral siphon で Pitx が発現.このことは,ホヤ oral siphon が脊椎動物・嗅覚-下垂体前葉プラコードと相同であることを示唆 (< Satoh, 16).
Pitx の遺伝子系統樹 (Fig. 3) と重複・欠失のマップ (Fig. 5).
Christiaen, L., Burighel, P., Smith, W.C., Vernier, P., Bourrat, F., Joly, J.S., 2002.
Pitx genes in Tunicates provide new molecular insight into the evolutionary origin of pituitary. Gene 287, 107–113.
ホヤ oral siphon で Pitx が発現.このことは,ホヤ oral siphon が脊椎動物・嗅覚-下垂体前葉プラコードと相同であることを示唆 (< Satoh, 16).
Pitx の遺伝子系統樹 (Fig. 2).
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SoxB1 (Sox2, Sox3) 遺伝子は,Six と Eya 遺伝子のターゲット遺伝子.細胞周期をコントロールする (Schlosser15 P243下).
Meulemans, D., Bronner-Fraser, M., 2007a.
The amphioxus SoxB family: implications for the evolution of vertebrate placodes. Int. J. Biol. Sci. 3, 356–364.
SoxB の遺伝子系統樹 (Fig. 1).
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Candiani, S., Pennati, R., Oliveri, D., Locascio, A., Branno, M., Castagnola, P., Pestarino, M., De Bernardi, F., 2005.
Ci-POU-IV expression identifies PNS neurons in embryos and larvae of the ascidian Ciona intestinalis. Development Genes and Evolution 215, 41–45.
POU-IV タンパク質の遺伝子系統樹 (Fig. 1).
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Ikeda T, Matsuoka T , Satou Y. 2013.
A time delay gene circuit is required for palp formation in the ascidian embryo. Development 140, 4703-4708. 日本語の説明.
プラコードの起源.プラコードは脊索動物の感覚器官を作る.脊椎動物の特有の構造と考えられていた.ホヤでは付着突起と呼ばれる部分が脊椎動物のプラコードに相同.
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Feinberg, T.E. and Mallat, J.M. 2017.
意識の進化的起源 (鈴木大地訳).頸草書房.
主に解剖学的な比較から,意識の起源を考察.
Tunicates は生活環で出現する脳領域が異なるため,祖先的な脊索動物の脳を復元するには役立たない (P52).Tunicates の各成長段階で現れる脳領域の役割を考察 (P51, P257).
Martin-Duran JM, et al. (2017)
Convergent evolution of bilaterian nerve cords. Nature.
左右相称動物の各系統では背腹パターンと胴神経構造に類似点が見られるが,これらは独立に進化したと指摘.その場合,この類似構造は左右相称動物の祖先に存在しないことになる.
Arendt D, Antonietta M, Marlow H: 2016.
From nerve net to nerve ring, nerve cord and brain - evolution of the nervous system.
Nat Rev Neurosci 2016, 17:61-72.
Holland ND (2016)
Nervous systems and scenarios for the invertebrate-to-vertebrate transition. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 371(1685):20150047.
小泉修 (2016)
神経系の起源と進化:散在神経系よりの考察. 比較生理生化学 33(3):116-125.
Liebeskind BJ, Hillis DM, Zakon HH, & Hofmann HA (2016)
Complex Homology and the Evolution of Nervous Systems. Trends Ecol. Evol. 31(2):127-135.
総説.
Strausfeld NJ, Hirth F (2016)
Introduction to ‘Homology and convergence in nervous system evolution.’ Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 371:20150034.
中枢神経系が左右相称動物の共通祖先に由来するという考えに異論を唱える (< Li et al. 2017).
Bier E & De Robertis EM (2015)
EMBRYO DEVELOPMENT. BMP gradients: A paradigm for morphogen-mediated developmental patterning. Science 348(6242):aaa5838.
Hejnol A & Lowe CJ (2015)
Embracing the comparative approach: how robust phylogenies and broader developmental sampling impacts the understanding of nervous system evolution. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci 370(1684).
環形動物や節足動物,脊索動物のいくつかでは,centralized ventral cord が無いことから,protostomes と deuterostomes の中枢神経系が共通祖先に由来するか懐疑的 (<Li et al. 17).
Holland ND, Holland LZ, Holland PW: 2015.
Scenarios for the making of vertebrates. Nature 2015, 520:450-455.
脊椎動物の起源に関する 2 つの仮説,annelid theory と enteropneust theory を解説.
Holland LZ (2015)
Evolution of basal deuterostome nervous systems. J. Exp. Biol. 218(Pt 4):637–645.
Holland LZ (2015)
Genomics, evolution and development of amphioxus and tunicates: The Goldilocks principle. J. Exp. Zool. B Mol. Dev. Evol. 324(4):342–352.
頭索動物は,脊索動物と脊椎動物の両方の祖先の情報を保持.
Holland LZ: 2015.
The origin and evolution of chordate nervous systems. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci, 370(1684).
Lowe, C.J., Clarke, D.N., Medeiros, D.M., Rokhsar, D.S., Gerhart, J., 2015.
The deuterostome context of chordate origins. Nature 520, 456–465.)
Enteropneust theory を解説.
Thompson JM & Di Gregorio A (2015)
Insulin-like genes in ascidians: findings in Ciona and hypotheses on the evolutionary origins of the pancreas. Genesis 53(1):82-104.
総説.膵臓の起源.
ナメクジウオでは,AmphiX-lox (Ipf1/Pdx1 のオーソログ) と AmphiCdx の発現は腸の後部だが, AphiNeiurogenin とインシュリン like ペプチドの位置から,膵臓に相当する部位が腸の中部と推定されている (P97左下).
Ohtsuka Y, Matsumoto J, Katsuyama Y, & Okamura Y (2014)
Nodal signaling regulates specification of ascidian peripheral neurons through control of the BMP signal. Development 141(20):3889-3899.日本語.
ホヤ幼生の感覚神経が作られる仕組みを解明.
Marlow H, Tosches MA, Tomer R, Steinmetz PR, Lauri A, Larsson T, Arendt D: 2014.
Larval body patterning and apical organs are conserved in animal evolution. BMC Biol , 12:7.
Holland LZ, et al. (2013)
Evolution of bilaterian central nervous systems: a single origin? Evodevo 4.
総説.左右相称動物の祖先は、中枢神経系かあるいは、散在神経系を持っていたのか。この問いは、脊索動物と protostomes は中枢神経系を持っているが、これらが一回のイベントで生じたのか、あるいは独立に生じたのか、と言い換えることができる。脊索動物以外の deuterostomes では、明確な中枢神経系が見られないのである。一般的には、左右相称動物の祖先は中枢神経系を持っていた、すなわち、中枢神経系は一回のイベントで生じたとされる。
著者らは、半索動物に見られる神経索が脊椎動物の中枢神経系と相同な構造とみなし、中枢神経の元となるシステムは左右相称動物の祖先で獲得されたと結論。棘皮動物は中枢神経系を失ったことになる (P15右下)。
Mallatt J & Holland N (2013)
Pikaia gracilens Walcott: Stem Chordate, or Already Specialized in the Cambrian? J Exp Zool Part B 320b(4):247-271.
頭索動物は,脊索動物と脊椎動物の両方の祖先の情報を保持.
Tosches MA, Arendt D: 2013.
The bilaterian forebrain: an evolutionary chimaera. Curr Opin Neurobiol, 23:1080-1089.
左右相称動物・前脳の進化に関する新しい仮説を提唱.
Beaster-Jones L (2012)
Cis-regulation and conserved non-coding elements in amphioxus. Brief Funct Genomics 11(2):118–130.
Levine M (2010)
Transcriptional enhancers in animal development and evolution. Curr. Biol. 20(17):R754-763.
Denes, A.S., Jekely, G., Steinmetz, P.R., Raible, F., Snyman, H., Prud’homme, B., Ferrier, D.E., Balavoine, G., Arendt, D., 2007.
Molecular architecture of annelid nerve cord supports common origin of nervous system centralization in Bilateria. Cell 129, 277–288.
環形動物のデータから,神経板境界を特定する遺伝子制御の相互作用 (神経板境界モジュール) が,protostomes と deuterostomes 間で共有されていると示唆 (< Green et al. 15).脊椎動物,環形動物,節足動物の中枢神経系は,左右相称動物の共通祖先に由来すると示唆 (< Li et al. 17).
Lacalli TC (2006)
Prospective protochordate homologs of vertebrate midbrain and MHB, with some thoughts on MHB origins. International Journal of Biological Sciences 2(3).
総説.ナメクジウオには中脳相当領域があると主張.ナメクジウオの後脳後部域からは,さまざまな神経細胞が生じる.このことは脊椎動物の中脳と同じ (中脳や MHB で発現する遺伝子群は,神経細胞の分化にも関わる).遺伝子発現パターンより遺伝子の機能に着目した考え方 (<西田&西駕07, P172).
Gerhart J, Lowe C, & Kirschner M (2005)
Hemichordates and the origin of chordates. Curr. Opin. Genet. Dev. 15(4):461-467.
Canestro C, Bassham S, & Postlethwait J (2005)
Development of the central nervous system in the larvacean Oikopleura dioica and the evolution of the chordate brain. Dev. Biol. 285(2):298-315.
オタマボヤ中枢神経系の発生と遺伝子発現.神経管の領域マーカーとなる Otx, Hox1, Pax2/5/8, En その他の遺伝子をワカレオタマボヤから単離し,発現部位を調査.オタマボヤには,ホヤと同様に,脊椎動物の前脳相当域と後納相当域 (運動神経がある後部神経節) はあるが,中脳相当域と MHB (midbrain-hindbrain boundary: 中脳後脳境界) はないと考えられる (<西田&西駕07).
Lowe, C. J. et al. 2003.
Anteroposterior patterning in hemichordates and the origins of the chordate nervous system. Cell 113, 853–865 (2003).
ギボシムシの表皮散在系が,脊索動物を含む多くの動物の中枢神経系と同様に前後軸にそってつくられることを示唆.ギボシムシにおける遺伝子発現パターンは,脊椎動物の相同遺伝子の中軸神経系前後軸に沿った発現 (Fi. 7) とよく似ていると言える (<西田&西駕07).
Saccoglossus (直接発生型ギボシムシ) で,22 の神経発生遺伝子 (以下) の発現を調べ,そのほとんどが体の前後軸にそって体表の細胞で発現 (Fig. 7).
6 遺伝子:脊索動物の全能で発現する転写因子をコード
10 遺伝子:脊索動物の中脳域で発現
6 遺伝子:脊索動物の後脳/脊髄に主な発現息を持tu.
ギボシムシの成体には,腹側神経索,背側神経索,表皮散在神経系が存在する.これらのどれが中枢神経系で,どれが末梢神経系か議論されていた.ギボシムシの中枢神経系が表皮散在神経系だとしたら,ギボシムシは左右相称動物で最も古い神経システムを持つことになる (< Satoh, 2004).
脊椎動物の中枢神経系で発現する遺伝子群,ギボシムシの体表外胚葉全体で発現しているということは,ギボシムシの散在神経系全体が脊椎動物の中枢神経系に対応する可能性を示しており,Lowe らの主張の骨子は,脊椎動物の中枢神経系が半索動物の散在神経系の集中化に由来しすることを示唆する (<西田&西駕07, P139).少なくとも,神経系の前後軸に沿ったパターニングに関するメカニズムとそれに関わる遺伝子群の起源が,脊索動物の起源よりも古くからあったことになる.Lowe らは,後口動物が成立したときには,すでに前後軸に沿った神経系の領域化があったと主張.この知見が半索動物全般に保存されるのかどうか確かめる必要があるが,前後軸に沿った領域化の起源はかなりふるいだろう (<西田&西駕07, P171).
Mineta K, et al. (2003)
Origin and evolutionary process of the CNS elucidated by comparative genomics analysis of planarian ESTs. Proc Natl Acad Sci U S A 100(13):7666-7671.
扁形動物プラナリアの脳で発現する遺伝子の多くが,進化的に脳が出現する以前から存在することを示唆. 116 遺伝子のうち,35% が酵母,85% がシロイヌナズナ,90% が線虫,95% がヒト・マウスと共有.多くが脳がない生物にも存在.
Holland ND (2003)
Early central nervous system evolution: an era of skin brains? Nat. Rev. Neurosci. 4(8):617-627.
Lowe et al. 03 をレビュー.
Lacalli T (2003)
Evolutionary biology: Body plans and simple brains. Nature 424(6946):263-264.
Lowe et al. 03 をレビュー.
Tautz D (2003)
Chordate Evolution in a New Light. Cell 113(7):812-813.
Lowe et al. 03 をレビュー.
Matheson T (2002)
Invertebrate nervous systems. ENCYCLOPEDIA OF LIFE SCIENCES.
Wada, H. and Satoh N.(2001)
Curr. Opin. Neurobiol., 11, 16-21.
Wada H. 2001.
多細胞動物の発生と進化.脊椎動物への 4 つのステップ.蛋白質 核酸 酵素.46, 1340-1348.
形の進化をもたらした遺伝子の進化.1) 三胚葉性動物での新しい体軸の進化,2) 前口動物と後口動物の分岐の際の背腹軸の逆転?,3) 後口動物の中からオタマジャクシ型の体性の進化,4) 脊椎動物におけるオタマジャクシ型の体制の精密化.神経堤細胞についても言及.
Arenas-Mena C, Cameron AR, & Davidson EH (2000)
Spatial expression of Hox cluster genes in the ontogeny of a sea urchin. Development 127(21):4631-4643.
ウニ成体原基で Hox 遺伝子発現を確認 (<西田&西駕07,P172).
Arendt D, Nubler-Jung K (1999)
Comparison of early nerve cord development in insects and vertebrates. Development 126:2309–2325.
脊椎動物,環形動物,節足動物の中枢神経系は,左右相称動物の共通祖先に由来すると示唆 (< Li et al. 17).
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Schmidt-Rhaesa A, Harzsch S, & Purschke G (2016)
Structure & evolution of invertebrate nervous systems (Oxford University Press, Oxford ; New York, NY) First edition. Ed pp xi, 748 pages.
半索動物
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総説.半索動物と脊索動物の神経系を比較.中枢神経の発生に関わる遺伝子を記述.Enteropneust にあるどの神経系が高等動物の神経系に対応するかわかっていない (P75左上).
Roottinger E, DuBuc TQ, Amiel AR, Martindale MQ: 2015.
Nodal signaling is required for mesodermal and ventral but not for dorsal fates in the indirect developing hemichordate, Ptychodera flava. Biol Open, 4:830-842.
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半索動物の背腹パターンから,脊索動物の初期進化を考察.半索動物は散財神経系を持ち,mediolateral neural patterning ではないことから,主な脊索動物とは異なる.
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On the nervous system of Saccoglossus cambriensis (Enteropneusta). Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci. 236, 315-354.
半索動物成体の神経系は,散在神経系であることを示す (<西田&西駕07, P139).
頭索動物
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ナメクジウオ幼生の脳の解剖学的構造と進化的解釈.
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Acrania (Cephalochordata). In A. Schmidt-Rhaesa, et al. (Eds). Structure and evolution of invertebrate nervous sytems. Oxford University Press.
ナメクジウオ幼生の脳の解剖学的構造と進化的解釈.
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Evolution and phylogeny of chordates. In M.D. Binder, N. Hirokawa et al. (Eds), Encyclopedia of neurosciences. Berlin: Springer-Verlag.
頭索動物は,脊索動物と脊椎動物の両方の祖先の情報を保持.
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総説.ナメクジウオ幼生の脳の解剖学的構造と進化的解釈.
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ナメクジウオ成体の脳の大きさについて.ナメクジウオの成体の脳は大きく膨らんでおらず脊椎動物よりも単純だが,数千ものニューロンがある (Feinberg, T.E. and Mallat, 2017, P53).
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頭索動物は,脊索動物と脊椎動物の両方の祖先の情報を保持.
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Invertebrate zoology, a functional evolutionary approach (7th ed.). Belmont, CA: Thomson: Brooks/Cole.
頭索類の解剖学.
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Landmarks and subdomains in the larval brain of Branchiostoma: Vertebrate homologs and invertebrate antecedents. Isr. J. Zool. 42:S131-S146.
尾索動物
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総説.細胞数が少なくその系譜が明らかなホヤ類の発生過程を追えば,脊索動物の中枢神経系の形成解明にヒントが得られる.
Waki K, Imai KS, & Satou Y (2015)
Genetic pathways for differentiation of the peripheral nervous system in ascidians. Nat Commun 6:8719.
脊椎動物の感覚神経は,無脊椎動物のものをそのまま進化させたのではなく,改めて移植して発展させたものと主張.背側と腹側の感覚神経を作り出す遺伝子回路を詳細に検討.背側と腹側の感覚神経は,Msx という共通した遺伝子によって感覚神経を作る遺伝子回路が動き出すことで形成されることを発見.
ホヤ幼生尾部の背側と腹側に感覚神経が分化する.背側の神経は脊椎動物と同様に神経版の境界領域にある細胞から作られ,腹側の神経は他の無脊椎動物と同様に表皮の中から分化する.
Suzuki J and Ohsumi N. 2012.
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Glober and Fritzsch 2009
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Tunicates の脳に関する研究.
Lacalli TC & Holland LZ (1998)
The developing dorsal ganglion of the salp Thalia democratica, and the nature of the ancestral chordate brain. Philos T Roy Soc B 353(1378):1943-1967.
さまざまな tunicates 下位群脳を調査.脊椎動物の脳にあるのと同じ,全脳,中脳,後脳という三つの領域を確認した.ただし,それは同時に存在していない.下位群と生活環の各段階で,この三つの脳領域のうちどれかを欠く (Feinberg and Mallat, 2017, P51).
Burighel, P. and Cloney, R.A. 1997.
Urochordata: Ascidiacea. In: Microscopic Anatomy of Invertebrates, Harrison, F.W. and Ruppert, E.E. (eds.), Vol. 15: Hemichordata, Chaetognatha, and the invertebrate chordates. Wiley-Liss, Inc., New York: 221-347.
Tunicates の脳に関する研究.
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The Regulatory Genome.
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The evolution of hierarchical gene regulatory networks. Nature Rev. Genet. 10, 141–148.
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Gene reglatory networks and the evolution of animal body plans.
総説.
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髄鞘とも言う.シュワン細胞 (オリゴデンドロサイドが特殊に分化した細胞) によって,形づくられる.ニューロン軸索の周りで,神経褶細胞のリン脂質20幕が何重にもまかれた渦巻き構造を持つ.細胞膜には特にスフィンゴミエリンが多く存在.絶縁体として電気信号の減衰を防ぐ.ランビエの絞輪は,軸索が数mm感覚で露出する部分で,電気信号が躍動して素早く伝わることを可能にしている.
髄鞘の構造形成には MBP (ミエリン塩基性タンパク質)
が大きく寄与する.
神経伝達の速度は重要.動物は進化の過程において,1) 軸索の巨大化 (イカ),2) ミエリン鞘の形成 (脊椎動物,エビ,ミミズ),という戦略をとった.
ヤツメウナギの神経は,ミエリン鞘で囲まれていない.このため神経伝達は遅く,素早い動きができない.しかし,神経のミエリン化に必要なミエリン塩基性タンパク質 (MBP) 遺伝子をはじめとするほどんどの遺伝子は,すでにヤツメウナギに存在している.
参考:脳科学辞典,ヒトの全細胞,進化研究を覗く,
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Zalc B, Goujet D, Colman D (2008)
The origin of the myelination program in vertebrates. Curr Biol 18: R511-R512
通信.ミエリン鞘は脊椎動物の根幹で得られたと考えられている.顎の獲得と同期.脊椎動物で洗練された神経システムでは,スフィンゴミエリンがミエリン鞘に利用されている.多くの動物が中枢神経系 (CNS) を持つが,脊椎動物だけがミエリン鞘によってコーティングされた神経を持つ.ミエリン鞘による信号伝達の高速化が,脊椎動物の巨大化を可能にした.
D K Hartline, D R Colman. 2007.
Rapid conduction and the evolution of giant axons and myelinated fibers. Curr. Biol.: 17(1);R29-35
総説.平行進化によって無脊椎動物の中には髄鞘様の構造を持つものが存在する(Fig. 3).エビやミミズ,ある種のミジンコの仲間などが髄鞘様の構造を有する(< 脳科学辞典)。
Abeytunga DT, Glick JJ, Gibson NJ, Oland LA, Somogyi A, Wysocki VH, et al. (2004)
Presence of unsaturated sphingomyelins and changes in their composition during the life
cycle of the moth Manduca sexta. J Lipid Res 45: 1221-1231
スフィンゴミエリンは後生動物で広く見られる.脱皮動物でも見られるが,Drosophila では知られていない.
Hanada K, Kumagai K, Yasuda S, Miura Y, Kawano M, Fukasawa M, et al. (2003)
Molecular machinery for non-vesicular trafficking of ceramide. Nature 426: 803-809
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