r8s

2019 年 7 月 19 日 改訂

r8s は最尤法を用いて分岐年代推定を行うソフトウェアです.解析に配列データは使われず,PAUP など他のプログラムで推定された樹長付き newick tree を用います.より詳細な prior 設定や蜜な解析が可能な,BEAST や MCMCTREE などベイズ年代推定プログラムの台頭であまり用いられなくなっています.

化石制約の評価を行うことができる Fossil Cross-Validation というオプションが有名ですが,私はやや疑問を持っています.Cross-Validation とは,得られた分子・樹長付き tree と複数設定した化石制約を照らし合わせて,不適切な化石制約を見つけ出す機能です.2011 年 1 月の時点では,BEAST か MCMCTREE に化石制約を評価するオプションはありません.上記のベイズ年代推定プログラムであれば,Soft bound で対応するという手もありますが,Soft bound に与える事前分布 (どれぐらい制約を破る推定を許すか) を変更する程度の対応になると思われます.しかし,個人的には,化石制約の選択は,分子・樹長付き tree にフィットするかどうかとは無関係に行う必要があると考えているため,Fossil Cross-Validation を使うのが正しいのか自信を持てません.化石データの性質と分子推定による樹長の変わりやすさを考えると,たとえ化石制約が適切でも,分子・樹長付き tree から大きく化石制約がそれることはあり得ると思います.このため,化石制約の評価は,Fossil Cross-Validation を行うよりも,文献やトポロジーに基づいて行った方が適切と思います.Benton et al. (2009) にはポジティブな見解で議論が書いてあります.

Benton, M. J., P. C. J. Donoghue., and R. J. Asher. 2009. Calibrating and constraining molecular clocks. Pages 35–86 in The Time Tree of Life (S. B. Hedges, and S. Kumar, eds.). Oxford University Press, Oxford.


インストール

Mac OS Mojave10.14.5 では, Homebrew を使うと gfotran を入れられませんでした.代わりに,広島大学のページに従って, gfortran 開発元である GFortran サイトから dmg ファイルをダウンロードして,gfortran をインストールしました.この場合,Xcode のインストールも必要なようです (2019 年 7 月).



Mac OS 10.8.5 へのインストール方法を紹介します.

r8s の Download r8s vers. 1.8 をクリックして,ソースコードをダウンロードしてください.本来ならば解凍して得られた dist ディレクトリに入って「make」と入力すればコンパイルされるはずですが,うまく行きませんでした.そこで,makefile 内容を見てみました.

# Make file for r8s
# Updated April 2003 for Linux and Mac OS 10.2. No other builds currently supported
#

FC = gfortran # Fortran compiler; standard on Linux, may have to go fetch this on OS X! (get it from Fink)
CC = gcc # GNU C compiler
LIBS = -lgfortran -lm # FORTRAN to C library, and standard C library
#LPATH = -L/usr/local/gfortran/lib
#LPATH = -L/usr/local/lib/gfortran
LPATH = -L/usr/local/gfortran/lib # correct location as of August 2011.
CFLAGS = -g -std=c99 -pedantic # for debugging, etc.
#CFLAGS = # usual case
....

はじめの太字の行: まず,gfortran を Homebrew を使って,

brew install gfortran

と入力してインストールしました.

次の太字の行:上の操作を行った後でも,make をしたら「libgfortran.3.dylib が見当たらない」とエラーメッセージが出たと思います.そこで,以下のコマンドで「libgfortran.3.dylib」を探して,LPATH の右側を変更しました.

[JunINOUE:~]$ sudo find / -name libgfortran.3.dylib
Password:
find: /dev/fd/3: Not a directory
find: /dev/fd/4: Not a directory
/usr/local/Cellar/gfortran/4.8.2/gfortran/lib/libgfortran.3.dylib

以下のように変更

LPATH = -L/usr/local/Cellar/gfortran/4.8.2/gfortran/lib/

その後,make によって,インストールが完了しました (2014 年 1 月).


簡単な例題

とりあえず動作確認する程度の例題です.
r8s_examInoue_fol.tar.gz を解凍してできたファイルに入って,以下のコマンドをうってください.

./r8s -b -f SAMPLE_CROSSVAL

あるいは

./r8s -b -f infile.nex

以下のようなスクリーンアウトが得られるはずです.



こちらの発表スライドもご参照ください.
Phylomethods Fall 2006 Dating - r8s, multidivtime (PDF file)


Fossil Cross-Validation で信頼区間を得るために,ブートストラップ法が用いられる場合があります.批判もあるようなので,注意して使ってください.私はまだ試したことが無いです.r8s bootstrap kit を用いるようです.