遺伝子ファミリーの進化
28 May 2019. Jun Inoue
器官の形成

Tatsumi N, Kobayashi R, Yano T, Noda M, Fujimura K, Okada N, Okabe M. 2016.
Molecular developmental mechanism in polypterid fish provides insight into the origin of vertebrate lungs. Scientific Reports 6:30580.

硬骨脊椎動物の祖先で肺の発生プログラムがすでに確率していたことを示す.
 四足類の肺形成に重要な 3 遺伝子 (Fgf10, Tbx4, Tbx5) が,ポリプテルスの肺・間葉で見せる発現パターンは,四足類のそれと酷似.さらに Tbx4 の肺間充織特異的エンハンサー (C-LUE) がポリプテルスとシーラカンスのゲノムに存在し,これらが四足類で機能を持つと指摘.ポリプテルスの肺発達は四足類と類似することが知られていた.  

 

病原遺伝子

癌遺伝子

Petljak M, Alexandrov LB, Brammeld JS, Price S, Wedge DC, Grossmann S, Dawson KJ, Ju YS, Iorio F, Tubio JMC, et al. 2019.
Characterizing Mutational Signatures in Human Cancer Cell Lines Reveals Episodic APOBEC Mutagenesis. Cell 176:1282-1294 e1220.

ガン突然変異の痕跡をデータベース化. 様々なガンのタイプに由来する,1001 ヒト細胞株と患者由来の 577 異種移植片を利用し,mutational signature (P1282右上,体細胞で生じた遺伝子やゲノム構造の変化) を検出. 細胞株の一部を用いて,in vivo (生体内で) 培養の間に痕跡となる突然変異のプロセスが活性を保持するのか検証し,その変化を追跡.突然変異の痕跡が増える細胞株は,将来行われるメカニズムの解明に利用できると主張.

アルツハイマー病関連遺伝子

Lee MH, Siddoway B, Kaeser GE, Segota I, Rivera R, Romanow WJ, Liu CS, Park C, Kennedy G, Long T, et al. 2018.
Somatic APP gene recombination in Alzheimer's disease and normal neurons. Nature 563:639-645.

アルツハイマー病関連遺伝子 APP で,体細胞性の組み換えが生じることを発見.この結果から,神経細胞の組み換えが,記憶と再生を可能にすると考察.これまでヒトの脳の多様性と複雑さは,ゲノムにコードされると仮定されていた. APP には, gencDNA (genomic cDNA: 体細胞間で変異のあるコピー配列) がモザイク状に存在することを示す.
 DNA in situ hybridization は,gencDNA が一つのニューロンにも存在すること指摘.RNA がニューロンで retro-insertion することで gencDNA が生じると示唆.アルツハイマー病患者のニューロンでは, アルツハイマー病と関連する突然変異を含んだ gencDNA が増加していた.
 APP はアミロイド前駆体タンパク質をコードする.  

 

CesA

セルロース合成酵素遺伝子

CesA: セルロース合成酵素遺伝子.多くのセルロース生産生物で同定されているが,その具体的な機能解析は全く進んでいない.その理由は,1) セルロース合成酵素が膜タンパク質であること,2) 複数のサブユニットからなる複合体であること,があげられる.

Ci-CesA: カタユウレイボヤに水平伝搬してきたセルロース関係の遺伝子.
・2002 年,セルロース合成酵素遺伝子と類似した遺伝子がカタユウレイボヤゲノム中に発見される.Ci-CesA と命名.
・ホヤの Ci-CesA は他のセルロース合成酵素とは異なる点.セルロース合成酵素 (N 末端, GT-2) とセルロース分解酵素 (C 末端,GH-6 ファミリーのセルラーぜ) と相同な領域が存在.しかし,ある種のバクテリアでは,セルロース合成酵素遺伝子とセルロース分解酵素遺伝子が隣同士になっていて,同一オペロンに存在する.また,ホヤのセルロース合成酵素にあるセルロース分解酵素相同領域は,バクテリアのものに近いことが分子系統解析から明らかにされている.このことから,Ci-CesA 遺伝子は,ホヤの祖先がバクテリアからセルロース合成酵素遺伝子と分解酵素遺伝子の両方を水平伝搬によって獲得し,その後ホヤ系統でこの 2 つの遺伝子が 1 つに融合されて一つの遺伝子になった,と推測されている.
 こちらを参照しました.

Bhattachan P, Dong B. 2017.
Origin and evolutionary implications of introns from analysis of cellulose synthase gene. Journal of Systematics and Evolution 55:142-148.

イントロンは真核生物で発明されたと指摘.イントロンは原核生物にはないが,真核生物にはある.その起源について二つの仮説があった: 1) 原核生物の祖先は持っていたが,失われた.2) 真核生物で発明された.
 バクテリアの祖先からホヤ類の祖先に水平伝搬したセルロース合成遺伝子の解析によって,イントロンの起源を考察. 植物とホヤの間でイントロン構造は保持されていなかった.このため,ホヤのセルロース合成遺伝子では,単にランダムにイントロンが挿入されたと考察.このことは,セルロース合成酵素へのイントロンの挿入が,真核生物の進化の過程で,植物とホヤで独立に生じたことを示す.つまり,もしイントロン構造が植物とホヤで保持されていたら,イントロンの起源は,植物と動物の分岐より古いバクテリアまで遡る可能性を示唆し,イントロンが原核生物に起源する可能性を支持する証拠になりえた (しかしそうはならなかった).
 菌類,藻類,バクテリア,尾索動物のセルロース合成ドメインに基づく系統樹を推定し (Fig. 3),ホヤ類セルロース合成酵素がバクテリア内部から分岐することを示す.このことは,バクテリアから尾索類にセルロース合成酵素が水平伝搬したことを意味する.

Shi-jing Sun, Tomoya Imai, Junji Sugiyama, Satoshi Kimura. 2017.
“CesA protein is included in the terminal complex of Acetobacter“ Cellulose, 24(5), pp. 2017-2027.

Ravenhall M, Skunca N, Lassalle F, Dessimoz C. 2015.
Inferring horizontal gene transfer. PLoS Computational Biology 11: e1004095.

Romling U, Galperin MY. 2015.
Bacterial cellulose biosynthesis: diversity of operons, subunits, products, and functions. Trends in Microbiology 23:545-557.

総説.バクテリアのセルロース合成とオペロン.バクテリア CesA オペロンには 3 タイプあり,常に GH8 が存在 (BcsZ) (<Nakashima per.com.).

Morgan JLW, Strumillo J, Zimmer J. 2013.
Crystallographic snapshot of cellulose synthesis and membrane translocation. Nature 493:181-U192.日本語

セルロース の合成を触媒し,細胞からその搬出を進めるタンパク質の X 線結晶構造.Rhodobacter sphaeroides (光合成細菌).

Nakashima K, Nishino A, Hirose E. 2011.
Forming a tough shell via an intracellular matrix and cellular junctions in the tail epidermis of Oikopleura dioica (Chordata: Tunicata: Appendicularia). Naturwissenschaften 98:661–669.

Nakashima K, Nishino A, Horikawa Y, Hirose E, Sugiyama J, Satoh N. 2011.
The crystalline phase of cellulose changes under developmental control in a marine chordate. Cellular and Molecular Life Sciences 68:1623–1631.

オタマボヤが,セルロースをどのように合成するか遺伝子レベルで解明.
 オタマボヤに 2 つのセルロース合成酵素が存在することを示す:Od-CesA1 (1257 残基,9 エクソン) と Od-CesA2 (1251 残基,10 エクソン).
 オタマボヤの幼生だけが,Iα allomorph を合成する能力を持つ (Fig.4legend下).
Oikopleura dioica (Od-CesA1:AB543594; Od-CesA2: AB543593)
Oikopleura longicauda (Ol-CesA2: AB543515)
Molgula tectiformis (Mt-CesA: AB543516)
Halocynthia roretzi (Hr-CesA: AB543517)
Ciona savignyi (CESA_CesA_like: AAR89623)
Ciona intestinalis (CiCesA: BAD10864)

Sagane Y., Zech K., Bouquet J. M., Schmid M., Bal U. & Thompson E. M. 2010
Functional specialization of cellulose synthase genes of prokaryotic origin in chordate larvaceans. Development 137, 1483-92.

ワカレオタマボヤ (Oikopleura dioica) CesA 遺伝子の発現を解析.二つの CesA 遺伝子,CesA1 と CesA2 を発見.それぞれ, グリコシル加水分解酵素 6 ファミリーセルロース様領域 (glycosyl hydrolase family 6 cellulase-like domain) の上流に糖転移酵素 2 領域(glycosyltransferase 2 domain) を持っていた.これはホヤ類に特異的にみられる構造である.オタマボヤ類と違いascidians は CesA 遺伝子を一つだけ持つ.
 Od-CesA1 は主として胚発生期に発現し,幼生尾部に沿った被嚢の形成に,Od-CesA2 は主として幼若体形成期で発現し,成体のハウス形成に関与.Od-CesA1 をノックダウンすると,幼生尾部の細胞外マトリックスにおけるセルロース生成が阻害されるだけでなく,脊索細胞がうまく配置されず尾部が伸長しない.尾芽胚幼生はハッチせず.一方で Od-CesA2 のノックダウンではその様な現象がみられず,ハウスの形成が遅れるだけ.つまり,重複によって生じた Od-CesA1 遺伝子によって作られる細胞外セルロース微小繊維は,脊索と尾の形成に役割を持つ.
 オタマボヤ類でみられた 2 つの CesA を生じた遺伝子重複は,urochordates の祖先で生じたか,あるいはオタマボヤ類祖先で生じたのか不明 (Fig. 7legend).

Hirose E (2009)
Ascidian tunic cells: morphology and functional diversity of free cells outside the epidermis. Invertebr Biol 128:83–96

ホヤの成体は,セルロース被覆 (cellulosic protective coat) を維持するのに特化した移動性の細胞を持つ (<Nakashima et al. 2011, Fig.4clegend下).

Xu, H., Chater, K. F., Deng, Z. and Tao, M. (2008).
A cellulose synthase-like protein involved in hyphal tip growth and morphological differentiation in Streptomyces. J. Bacteriol. 190, 4971-4978.

In Streptomyces coelicolor, a GH-6 glycosylhydrolase is present downstream of the glycosyltransferase gene, albeit in the opposite orientation (< Sagane et al. 2010, Fig7legend).

Kimura S, Itoh T (2007)
Biogenesis and function of cellulose in tunicates. In: Brown RM, Saxena IM (eds) Cellulose: molecular and structural biology. Springer, Dordrecht

Ascidians の成体は,様々なセルロース構造を作成する (<Nakashima et al. 2011, Fig.4clegend下).

Nakashima K. 2007.
動物がつくるセルロース. In. 生物科学専攻:生物多様性研究の統合のための拠点形成. 京都: 京都大学.

CesA 遺伝子系統樹を推定すると,カタユウレイボヤの遺伝子は,原核生物のグループに属する原核生物である細菌や古細菌の遺伝子に近い.

Nobles DR, Brown RM (2007)
Many paths up the mountain: tracking the evolution of cellulose biosynthesis. In: Brown RM,
Saxena IM (eds) Cellulose: molecular and structural biology. Springer, Dordrecht

Sasakura Y. 2007.
カタユウレイボヤにおける固着生活とセルロースの関係.

Sasakura Y, Nakashima K, Awazu S, Matsuoka T, Nakayama A, Azuma J, Satoh N. 2005.
Transposon-mediated insertional mutagenesis revealed the functions of animal cellulose synthase in the ascidian Ciona intestinalis. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 102:15134–15139.

トランスジェニック技術を駆使した研究で,Ci-CesA 遺伝子が機能を失うと,セルロースが合成なされないことを確認.また,Ci-Ces A はセルロース合成だけでなく,変態にも関わることを示唆.

Matthysse, A. G., Deschet, K., Williams, M., Marry, M., White, A. R. and Smith, W. C. (2004).
A functional cellulose synthase from ascidian epidermis. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101, 986-991.

CesA 遺伝子の後半は,family 6 glycosylhydorase (GH6) とホモロジーがあると指摘 (P990右下).この領域は,セルロース合成に関わらず,産物は,酵素活性に必要とされるアスパラギン酸残基がないため,glycosylhydrolyase (グリコシドヒドラーゼ) 活性を持たないと示唆.多くの prokaryotes では,セルロース合成遺伝子と endoglucanase 遺伝子が一つのオペロンに入っている  (Romling 2002).ホヤ類のセルロース合成はセルラーゼ活性が必要か,さらなる研究が必要と指摘.

Nakashima K, Yamada L, Satou Y, Azuma J, Satoh N. 2004.
The evolutionary origin of animal cellulose synthase. Development Genes and Evolution 214:81–88.

ホヤゲノムにセルロース合成酵素をコードする遺伝子 Ci-CesA が存在することを示す.GT-2 の遺伝子系統樹から,植物に近縁とはならず,むしろバクテリアのものに近い可能性を示唆 (Fig. 2).
 Streptomyces 3 種のゲノムには,GH-6 セルラーぜを含む遺伝子クラスターが存在.この遺伝子クラスター,あるいはオペロンが,Ci-CesA の起源と推定(P85, 左中).
 CH-6 domain では,触媒に重要なアミノ酸サイト (保存的) が変異しているため,この domain は本来の触媒活性を失っていると示唆 (P84右上).
 ほとんどのバクテリアでは,セルロース合成酵素遺伝子がセルラーゼ遺伝子の近くに存在する.この研究で,Streptomyces 3 種では,セルロース合成酵素とセルラーゼ遺伝子の一つである GH6 遺伝子がゲノム上で近くに存在することを発見 (P85左).

 

リグニン

堀千明, 五十嵐圭日子, 鮫島正浩. 2015.
木材腐朽担子菌のゲノム・ポストゲノム解析から植物細胞壁と分解酵素の共進化を考える. 化学と生物.

レビュー.木材腐朽担子菌のゲノム解析.細胞壁を壊されないように進化する植物との攻防.

Floudas D, Binder M, Riley R, Barry K, Blanchette RA, Henrissat B, Martinez AT, Otillar R, Spatafora JW, Yadav JS, et al. 2012.
The Paleozoic Origin of Enzymatic Lignin Decomposition Reconstructed from 31 Fungal Genomes. Science 336:1715–1719.



Pol η

ポリメラーゼ ・イータ

・ヒト DNA ポリメラーゼ ηは,紫外線によって生じるDNA 損傷であるシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD) を,正確にかつ効率的に乗り越えて複製できる,特殊な  DNA ポリメラーゼ .1999 年に当時大阪大学の花岡グループによって発見された (Masutani et al. 1999).
・DNA ポリメラーゼ η は,損傷を受けた DNA を複製する Y ファミリーに分類される.
・損傷を乗り越えて忠実な DNA を複製できる DNA ポリメラーゼ .これによって,複製中に遭遇した損傷を回避する機構の研究が開始された.

Ohmori H, et al. 2001.
The Y-family of DNA polymerases. Molecular Cell 8:7-8.

ポリメラーゼ の遺伝子系統樹.

Masutani C, Kusumoto R, Yamada A, Dohmae N, Yokoi M, Yuasa M, Araki M, Iwai S, Takio K, Hanaoka F. 1999.
The XPV (xeroderma pigmentosum variant) gene encodes human DNA polymerase eta. Nature 399:700-704.

ポリメラーゼ ・イータの発見.酵母では Rad30 タンパク質,ヒトでは DNA ポリメラーゼ η (イータ) (abstract中) に相同.
 皮膚ガンに関連する Xeroderma pigmentosum variant (XP-V) と言う症状を持つ細胞では,紫外線によってダメージを受けた DNA を修復できないことが知られていた. XP-V 細胞抽出物から得たある DNA ポリメラーゼが,酵母Rad30 に相当する,ヒトのホモログであった.解析に用いた全ての XP-V 細胞では,DNA ポリメラーゼ η に変異がみられた.

 

FADS2

FADS2 (脂肪酸不飽和酵素2, Fatty acid desaturase 2)

DHA 生合成において,不飽和化を触媒する酵素をコードする遺伝子.
 人体には 3 種の脂肪酸不飽和化酵素 (FADS) 遺伝子, FADS1,2,3 が存在する(参考).FADS1 は Δ5不飽和化酵素,FADS2 はΔ6不飽和化酵素として知られる.FADS1 および FADS2 は,不飽和脂肪酸の代謝に重要とされる.
 魚類は多種多様な不飽和脂肪酸を利用している.不飽和脂肪酸は同じ炭素数の飽和脂肪酸に比べて,低い融点を示す.魚類など寒冷地の生息する変温動物にとって,不飽和脂肪酸の低い融点は生体構成脂質として有用とされる.
 ドコサヘキサエン酸 (docosahexaenoic acid) 魚油に含まれる炭素数22の4,7,10,13,16,19-ヘキサ不飽和脂肪酸 (wiki).

Castro LF, Monroig O, Leaver MJ, Wilson J, Cunha I, Tocher DR. 2012.
Functional desaturase Fads1 (Delta5) and Fads2 (Delta6) orthologues evolved before the origin of jawed vertebrates. PLoS One 7:e31950.

系統特異的の遺伝子の重複・欠失・多様化が,地質学的な時間スケールでみられる,異なる環境への移行と食物連鎖構造の変化と関連すると示唆.脊椎動物において,Fads1-Δ5とFads2-Δ6 不飽和化がいつ進化したか,タイミングを検証.それぞれΔ5 とΔ6 activity を持つ Fads1 と Fads2 遺伝子の分岐は,顎口動物の祖先で生じていた.このため,真骨魚類では二次的に Fads1 が欠失した.このことは,真骨類ではΔ5 activity が独立に Fads2 type 遺伝子で獲得されたことを示す.
 ARA, EPA, DHA など長鎖・高度不飽和脂肪酸は,生体膜を構成する物質として重要.ARA, EPA, DHA の内因的な合成は,食物に含まれる前駆的脂肪酸から,伸張やΔ5 と Δ6 不飽和化を通して生じる.
 不飽和化の活量 (activity) は,脊椎動物内部の系統で異なる.哺乳類では,Δ5actityty は Fads1 遺伝子に,Δ6不飽和化は Fads2 に配置される.真骨類ではこれらの活量は Fads2-type 遺伝子に配置される.
 真骨類では Fads1 が失われ,鳥類と爬虫類では Fads1 遺伝子が多様化.哺乳類には Fads4 遺伝子があった.


山中因子

Maekawa M, Yamaguchi K, Nakamura T, Shibukawa R, Kodanaka I, Ichisaka T, Kawamura Y, Mochizuki H, Goshima N, Yamanaka S. 2011.
Direct reprogramming of somatic cells is promoted by maternal transcription factor Glis1. Nature 474:225-229.

Maekawa M, Yamanaka S. 2011.
Glis1, a unique pro-reprogramming factor, may facilitate clinical applications of iPSC technology. Cell Cycle 10:3613-3614.

GLIS1 が,山中 4 因子の一つ,Klf4,と交換可能と指摘.

Layden MJ, Meyer NP, Pang K, Seaver EC, Martindale MQ. 2010.
Expression and phylogenetic analysis of the zic gene family in the evolution and development of metazoans. Evodevo 1:12.

GLIS の遺伝子系統樹.

Omori Y, Zhao CT, Saras A, Mukhopadhyay S, Kim W, Furukawa T, Sengupta P, Veraksa A, Malicki J. 2008.
elipsa is an early determinant of ciliogenesis that links the IFT particle to membrane-associated small GTPase Rab8. Nature Cell Biology 10:437-U140.
日本語.

elipsa タンパク質が,繊毛の形成や機能に必要なタンパク分子の運び屋であることを指摘.
 鞭毛内輸送 (ITF, intraflagellar transport) 粒子の研究.繊毛の形成・機能に必要なタンパク質の輸送の仕組みを解析し,elipsa と言う遺伝子が重要な鍵を握ることをゼブラフィッシュを用いて発見.elipsa は,ヒトからハエ,線虫,鞭毛虫などに共通する,昔された古い遺伝子であった.ゼブラフィッシュで elipsa が突然変異を起こすと,耳,目,脊髄,腎臓で繊毛がなくなり,細胞体に根元が残っていることを報告.elipsa がコードするタンパク質は, IFT (繊毛内輸送複合体) や細胞内小胞輸送の制御因子であるRab のエフェクター Rabaptin6 に結合し,複合体を形成すると指摘.
  Advidor-Reiss et al. (2004) により遺伝子を絞り込む.

Takahashi K, Tanabe K, Ohnuki M, Narita M, Ichisaka T, Tomoda K, Yamanaka S. 2007.
Induction of pluripotent stem cells from adult human fibroblasts by defined factors. Cell 131:861-872.

Takahashi K, Yamanaka S. 2006.
Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell 126:663-676.

Avidor-Reiss T, Maer AM, Koundakjian E, Polyanovsky A, Keil T, Subramaniam S, Zuker CS. 2004.
Decoding cilia function: defining specialized genes required for compartmentalized cilia biogenesis. Cell 117:527-539.

繊毛に関係すると考えられる 200 遺伝子をリストアップ.植物や酵母の様に細胞に繊毛がない生物と,鞭毛虫や線虫,ヒトなど細胞に繊毛を持つ生物のゲノムを比較.

ALDH1A

アルデヒドデヒドロゲナーゼ


Handberg-Thorsager M, et al. 2018.
The ancestral retinoic acid receptor was a low-affinity sensor triggering neuronal differentiation. Science Advances. 4.

Caspermeyer J. 2016.
The Telltale Heart of Chordate Evolution: New Study Shows Model Organism Making Do with Less. Mol Biol Evol. 2016;33:2480.

Malti-Sloans et al. (2016) の紹介.

Marti-Solans J, Belyaeva OV, Torres-Aguila NP, Kedishvili NY, Albalat R, Canestro C. (2016)
Coelimination and Survival in Gene Network Evolution: Dismantling the RA-Signaling in a Chordate. Mol. Biol. Evol. 33(9):2401-2416.

オタマボヤのレチノイン酸代謝経路に含まれる 5 つの遺伝子が,退行進化の過程で欠失したと推定.本研究の 5 遺伝子のようにいくつかの遺伝子が失われていると,遺伝子ネットワークのモジュール (部品の集まり) を認識するのに役立つと指摘.レチノイン酸代謝に関わる分子は,脊椎動物の生理と胚発生に極めて重要とされる.

Holmes RS. 2015.
Comparative and evolutionary studies of vertebrate ALDH1A-like genes and proteins. Chem Biol Interact. 2015;234:4-11.

Sobreira TJ, Marletaz F, Simoes-Costa M, Schechtman D, Pereira AC, Brunet F, Sweeney S, Pani A, Aronowicz J, Lowe CJ, et al. 2011.
Structural shifts of aldehyde dehydrogenase enzymes were instrumental for the early evolution of retinoid-dependent axial patterning in metazoans. Proc Natl Acad Sci U S A 108:226-231.

ALDHs (aldehyde dehydrogenases) の基質選択.植物や菌類,後生動物全体の ALDHs (ALDH1/2s, ALDH1Ls, ALDH8s) 遺伝子系統樹 (Fig.1,S2) に沿って考察.Metazoan ALDH1 クレード内部に,metazoan ALDH2 クレードが分岐.

Albalat R, Canestro C (2009)
Identification of Aldh1a, Cyp26 and RAR orthologs in protostomes pushes back the retinoic acid genetic machinery in evolutionary time to the bilaterian ancestor. Chem Biol Interact 178: 188–196.

Canestro C, Catchen JM, Rodriguez-Mari A, Yokoi H, & Postlethwait JH (2009)
Consequences of Lineage-Specific Gene Loss on Functional Evolution of Surviving Paralogs: ALDH1A and Retinoic Acid Signaling in Vertebrate Genomes. PLoS Genet. 5(5).

保存シンテニーから,オーノログの系統関係とロスが推定できることを示した.ALDH1A 遺伝子系統のカウンターパートである ALDH1A3-ogm (ohonolog gone missing) 遺伝子系統が,VGD 直後に欠失と指摘 (P4左下).
 レチナールデヒド脱水素酵素 (Aldh1a) 遺伝子ファミリに注目し,四足類と真骨類間でオーノログの有無をシンテニーから解析.真骨類の WGD 由来重複領域間で遺伝子の抜け落ち方に偏りがあるとし,ゲノムの部分的な構造が WGD 由来ペア遺伝子の保存に影響を及ぼすと示唆. Fig. 8 に z 軸入り遺伝子系統樹を表示.

Campo-Paysaa F, Marletaz F, Laudet V, Schubert M (2008)
Retinoic acid signaling in development: Tissue-specific functions and evolutionary origins.
Genesis 46: 640–656.


Pittlik S, Domingues S, Meyer A, Begemann G (2008)
Expression of zebrafish aldh1a3 (raldh3) and absence of aldh1a1 in teleosts. Gene Expr Patterns 8: 141–147.


Canestro C, Postlethwait JH. 2007.
Development of a chordate anterior-posterior axis without classical retinoic acid signaling. Dev Biol 305:522-538.

オタマボヤ胚・前後軸形成にレチノイン酸は作用していないことを確認.
 レチノイン酸による発生シグナルは,脊索動物ボディープランの起源に重要な新機軸と考えられている.しかしオタマボヤ・ゲノムにはレチノイン酸合成に関わる遺伝子がないため,レチノイン酸の古典的な形態形成機構なしに,脊索動物ボディープランの前後軸は組織されうることを意味する.



輸送遺伝子

Ghimire-Rijal S, Lu X, Myles DA, Cuneo MJ. 2014.
Duplication of genes in an ATP-binding cassette transport system increases dynamic range while maintaining ligand specificity. J. Biol. Chem. 289:30090–100.

輸送に関与する遺伝子は,全ゲノム重複の後で重複状態が維持されることが多い.


性決定遺伝子

Kikuchi K (2014)
移り変わる性決定遺伝子. 生物科学 65(3):136– 145.

総説.トラフグを中心に魚類の多様な性決定遺伝子や染色体進化を紹介.


左右体軸形成に関わる遺伝子

左右体軸形成に関わる遺伝子

Arias CF, Herrero MA, Stern CD, & Bertocchini F (2017)
A molecular mechanism of symmetry breaking in the early chick embryo. Sci  Rep7(1):15776.

Suzuki A, et al. (2017)
Genome organization of the vg1 and nodal3 gene clusters in the allotetraploid frog Xenopus laevis. Dev. Biol. 426(2):236-244.

両生類では 1 コピーしかないと考えられていた GDF 遺伝子配列を Xenopus tropicalis で発見.脊椎動物では哺乳類だけが Vg1 遺伝子を 2 コピー (GDF1 と GDF3) 持っており,GDF3 は哺乳類の進化的イノベーションとみなされていた.

Bisgrove BW, Su YC, & Yost HJ (2017)
Maternal Gdf3 is an obligatory cofactor in Nodal signaling for embryonic axis formation in zebrafish. Elife 6.

Nodal は,細胞間シグナル伝達リガンドの TGFβスーパー遺伝子族のメンバー.その TFF βスーパー遺伝子族に,胚発生初期の左右決定に関わる vg1 遺伝子が知られる.vg1 遺伝子のコピー数は脊椎動物の系統で異なると考えられており,哺乳類では 2 つ (GDF1 と GDF3), ゼブラフィッシュでは一つ (gdf3, dvr1 と同じ) 存在する.

Montague TG & Schier AF (2017)
Vg1-Nodal heterodimers are the endogenous inducers of mesendoderm. Elife 6.

Davison A, McDowell GS, Holden JM, Johnson HF, Koutsovoulos GD, Liu MM, et al. 2016.
Formin Is Associated with Left-Right Asymmetry in the Pond Snail and the Frog. Curr Biol. 2016;26:654–60.

Kuroda R, Fujikura K, Abe M, Hosoiri Y, Asakawa S, Shimizu M, et al. 2016.
Diaphanous gene mutation affects spiral cleavage and chirality in snails. Sci Rep. 2016;6:34809.

Komatsu Y & Mishina Y (2013)
Establishment of left-right asymmetry in vertebrate development: the node in mouse embryos. Cell. Mol. Life Sci. 70(24):4659-4666.

総説.マウス初期胚の左右対称性が崩れるメカニズムとノード流

Nakamura T & Hamada H (2012)
Left-right patterning: conserved and divergent mechanisms. Development 139(18):3257-3262.

Meno C (2008)
左右体軸形成の分子機構. 生化学.

脊椎動物では,側板中胚葉の Nodal-Pitx2 のカスケードが保存されている.体の頭尾軸に沿って臓器が決まった左右非対称性を示すのは,この遺伝子カスケードによる.
 脊椎動物の内臓は,顕著な左右非対称性 (left-right asymmetry) を示す.胚は左右対称だが,発生過程で非対称を生み出す.左右非対称に発現する遺伝子が発現されてから,左右軸の理解は大きく進展した.マウスの解析から,ノード流という生命現象が発見された.
 Nodal の下流,GDF1 や BMP, Lefty を遺伝子発現カスケードを側板中胚葉の左右で図示 (Fig.2).
 Nodal はトランスフォーミング増殖因子β (TGFβ) スーパーファミリーに属する分泌因子.左側廃盤中胚葉で一過的に発現.同じファミリーに属する Lefty1 と Lefty2 によって,Nodal は左側だけで発現するように抑制されている.
 GDF1 はTGFβスーパーファミリー.左右側板中胚葉とノードで発現する分泌因子.ノードの Nodal が拡散して作用を及ぼすために必要

Tanaka C, Sakuma R, Nakamura T, Hamada H, & Saijoh Y (2007)
Long-range action of Nodal requires interaction with GDF1. Genes Dev. 21(24):3272-3282.

Kawakami Y (2005)
脊椎動物の左右非対称性形成機構.




ヘモグロビン

ヘモグロビン

脊椎動物やその他の動物の赤血球に存在するタンパク質.酸素分子と結合する生成つを持ち,肺から全身へと酵素を運搬する.赤色素であるヘムを持っているため赤色を帯びる.成人のヘモグロビンは二種類にサブユニット (αサブユニットとβサブユニット) それぞれ二つから構成される四量体構造をなす.各サブユニットはグロビンと呼ばれるポリペプチド部分と補欠分子族である一つのヘム部分が結合したもの.ヘムは二価の鉄原子を中央に配置.このヘムの鉄原子に酸素が結合し,血中を流れる.

Hoffmann FG, Vandewege MW, Storz JF, & Opazo JC (2018)
Gene Turnover and Diversification of the alpha- and beta-Globin Gene Families in Sauropsid Vertebrates. Genome Biol Evol 10(1):344-358.

βグロビン遺伝子クラスターは,脊椎動物の主なグループ間で独立した起源を持つ一方で,共に四量体を形成する αグロビン遺伝子は単一起源.

Opazo JC, et al. (2015)
Ancient Duplications and Expression Divergence in the Globin Gene Superfamily of Vertebrates: Insights from the Elephant Shark Genome and Transcriptome. Mol. Biol. Evol. 32(7):1684-1694.

脊椎動物グロビン遺伝子の進化.Non-vertebrate deuterostomes も解析.

Opazo JC, et al. (2015)
Gene turnover in the avian globin gene families and evolutionary changes in hemoglobin isoform expression. Mol. Biol. Evol. 32(4):871-887.

脊椎動物でもゲノム構造が保存的とされる鳥類 で,52 種のゲノムを用いてグロビン遺伝子の進化を考察.

Opazo JC, Butts GT, Nery MF, Storz JF, & Hoffmann FG (2013)
Whole-Genome Duplication and the Functional Diversification of Teleost Fish Hemoglobins. Mol. Biol. Evol. 30(1):140–153.

全ゲノム重複,大規模な部分重複,小規模な遺伝子重複が,真骨類のヘモグロビン多様化にどのように貢献したかをシンテニーから解析.α-,β- グログリンがガーパイクに存在することを確認.

Storz J F, Opazo JC, Hoffmann FG. Forthcoming 2013.
Gene duplication, genome duplication, and the functional diversification of vertebrate globins. Mol Phyl Evol.

脊椎動物グロビン遺伝子ファミリーの進化.

Hoffmann FG, Opazo JC, & Storz JF (2010)
Gene cooption and convergent evolution of oxygen transport hemoglobins in jawed and jawless vertebrates. Proc Natl Acad Sci U S A 107(32):14274–14279.

βグロビン遺伝子クラスターは,脊椎動物の主なグループ間で独立した起源を持つ.

Ebner B, et al. (2010)
The globin gene family of the cephalochordate amphioxus: implications for chordate globin evolution. BMC Evol. Biol. 10:370.

脊椎動物グロビン遺伝子のオーソログをナメクジウオで判定.一方,ナメクジウオの脊索で発現するオーソログは判定できなかった.

Opazo JC, Hoffmann FG, & Storz JF (2008)
Genomic evidence for independent origins of beta-like globin genes in monotremes and therian mammals. Proc Natl Acad Sci U S A.

βグロビン遺伝子クラスターは,単孔類と獣類 (therian mammals) で独立に遺伝子重複したことを発見.


オプシン
オプシン
MHC

Major histocompatibility complex 主要組織適合遺伝子複合体

Malmstrom M, Matschiner M, Tørresen OK, Star B, Snipen LG, Hansen TF, et al. 2016.
Evolution of the immune system influences speciation rates in teleost fishes. Nat. Genet. 48:1204–10.

タラ目魚類 27 種を中心とした真骨魚類 66 種のゲノム配列を解読し 76 種間で比較 (P1204左下).タラ目で MHC II の欠落を発見.タラ目内部の系統関係を推定.MHC II の欠落を補うとされる MHC I 遺伝子コピー数は,種の多様性とともに増加していた.このことから,MHC 遺伝子が,真骨魚類の急速な多様化を促進するの種分化遺伝子としての役割も持つと示唆.

Buonocore, F. & Gerdol, M. 2016.
Alternative adaptive immunity strategies: coelacanth, cod and shark immunity. Mol. Immunol. 69, 157–169.

Haase, D. et al. 2013.
Absence of major histocompatibility complex class II mediated immunity in pipefish, Syngnathus typhle: evidence from deep transcriptome sequencing. Biol. Lett. 9, 20130044.

Malmstrøm, M., Jentoft, S., Gregers, T.F. & Jakobsen, K.S. 2013.
Unraveling the evolution of the Atlantic cod’s (Gadus morhua L.) alternative immune strategy. PLoS One 8, e74004.

Nomiyama H, Osada N, Yoshie O 2013.
Systematic classification of vertebrate chemokines based on conserved synteny and evolutionary history. Genes to Cells 18: 1-16.

シンテニー解析によりケモカインのオーソログを判定.ケモカインの基本セットは,顎口類の祖先種で形成されたと結論.
意見:力作.免疫系のような多重遺伝子ファミリーを構築する遺伝子は,系統樹によってオーソログを判定することは困難である.その場合にシンテニー解析は威力を発揮する.

Nonaka MI, Aizawa K, Mitani H, Bannai HP, & Nonaka M (2011)
Retained Orthologous Relationships of the MHC Class I Genes during Euteleost Evolution. Mol. Biol. Evol. 28(11):3099-3112.

Star, B. et al. 2011.
The genome sequence of Atlantic cod reveals a unique immune system. Nature 477, 207–210.

タイセイヨウマダラのゲノム配列.22,154個の遺伝子を同定.主要組織適合複合体(MHC)II、CD4およびIi(invariant chain)の遺伝子を失っていた.しかしタイセイヨウマダラは自然状態では疾患への感受性が非常に高いわけではない.MHC I遺伝子の数が非常に多くなっていた.

Flajnik, M.F. & Kasahara, M. 2010.
Origin and evolution of the adaptive immune system: genetic events and selective pressures. Nat. Rev. Genet. 11, 47–59.

Litman, G.W., Rast, J.P. & Fugmann, S.D. 2010.
The origins of vertebrate adaptive immunity. Nat. Rev. Immunol. 10, 543–553.

Kasahara M (2007)
The 2R hypothesis: an update. Curr. Opin. Immunol. 19(5):547-552.

総説.

Darbo E, Danchin EGJ, Mc Dermott MFP, & Pontarotti P (2008)
Evolution of major histocompatibility complex by "en bloc" duplication before mammalian radiation. Immunogenetics 60(8):423-438. Anchor.

ヒトの 6 番染色体にある MHC 領域が,哺乳類が多様化する前に生じた部分的な重複に由来すると示唆.


嗅覚受容体

Suzuki H, Nikaido M, Hagino-Yamagishi K, Okada N. 2015.
Distinct functions of two olfactory marker protein genes derived from teleost-specific whole genome duplication. BMC Evolutionary Biology 15:245.

機能の異なる嗅覚マーカータンパク質遺伝子が,真骨類全ゲノム重複に由来して機能分担によって生じたことを,データベース検索だけでなく実験によって証明.

Matsui A, Go Y, & Niimura Y (2010)
Degeneration of Olfactory Receptor Gene Repertories in Primates: No Direct Link to Full Trichromatic Vision. Mol. Biol. Evol. 27(5):1192-1200.

種の系統樹に沿って遺伝子ファミリーメンバーの系統特異的な欠失と重複過程を詳細に検討し,霊長類における嗅覚受容体遺伝子群の欠失は三色視の獲得と無関係と主張.

Niimura Y (2009)
On the Origin and Evolution of Vertebrate Olfactory Receptor Genes: Comparative Genome Analysis Among 23 Chordate Species. Genome Biology and Evolution 1:34–44.

Go Y & Niimura Y (2008)
Similar numbers but different repertoires of olfactory receptor genes in humans and chimpanzees. Mol. Biol. Evol. 25(9):1897-1907.

Horth L. 2007.
Sensory genes and mate choice: evidence that duplications, mutations, and adaptive evolution alter variation in mating cue genes and their receptors. Genomics 90:159–75.

総説.感覚に関与する遺伝子は,全ゲノム重複の後で重複状態が保持されやすい.

Hashiguchi Y & Nishida M (2007)
魚類における嗅覚系の適応および進化の分子機構:嗅覚受容体遺伝子ファミリーに着目して.魚類学雑誌 54:105–120.

総説.

Niimura Y, Nei M (2006)
Evolutionary dynamics of olfactory and other chemosensory receptor genes in vertebrates. J HumGenet 51(6):505–517.

Serizawa S, Miyamichi K, & Sakano H (2004)
One neuron-one receptor rule in the mouse olfactory system. Trends Genet. 20(12):648-653.

総説.


苦味受容体遺伝子

Hayakawa T, Suzuki-Hashido N, Matsui A, & Go Y (2014)
Frequent Expansions of the Bitter Taste Receptor Gene Repertoire during Evolution of Mammals in the Euarchontoglires Clade. Mol. Biol. Evol.

ヒトを中心とした真主齧上目 39 種のゲノムデータに基づいて,苦味受容体遺伝子ファミリ (TAS2Rs) の進化過程を種の系統樹に沿って再構築.遺伝子重複による遺伝子レパートリの急激な増加は系統ごとに頻出.Euarchontoglires では少なくとも 7 回独立に生じたらしい.

Hayakawa T, et al. (2012)
Eco-Geographical Diversification of Bitter Taste Receptor Genes (TAS2Rs) among Subspecies of Chimpanzees (Pan troglodytes). Plos One 7(8).

チンパンジーの苦味感覚の地域差が,いくつかの苦味受容体遺伝子の有無に由来することを示す.
 チンパンジー 4 亜種 59 個体から得られた全苦味受容体遺伝子の配列について SNVs, indels,遺伝子変換,CNVs を比較解析.いくつかの苦味受容体遺伝子が,地域集団内部でブロック単位で欠失していた.

Go Y (2006)
Lineage-specific expansions and contractions of the bitter taste receptor gene repertoire in vertebrates. Mol. Biol. Evol. 23(5):964-972.

脊椎動物の主要グループ間で数が異なる苦味受容体遺伝子の進化パターンを,遺伝子系統樹から推定.苦味受容体遺伝子は哺乳類の分散直前で多様化した一方,ニワトリに続く系統で縮小したとする.


ビテロゲニン

Finn RN, Kristoffersen BA 2007.
Vertebrate vitellogenin gene duplication in relation to the "3R hypothesis": correlation to the pelagic egg and the oceanic radiation of teleosts. Plos One 2: e169.

3R-WGD 後に特異的に重複したビテロゲニン遺伝子の neo-functionalization が,海域に進出した真骨類の進化と繁栄につながる key event であったと提案.
 ビテロゲニンは浸透圧調節を行うタンパク質.真骨類は淡水に起源すると考えられていることから,海水への進出に際して卵を浸透圧変化から守る必要があった.ヒトを含む四足類と真骨類数種から得たビテロゲニンをコードする遺伝子配列に基づいて,遺伝子系統樹を推定し,3R 後に本遺伝子が特異的に重複し, 海洋に適した形質を獲得したと示唆.これらは neofunctionalization によるとし,そのタイミングが acanthomorpha の出現 (化石) と一致するという.
意見: 真骨類が淡水起源であることを明記した論文がないので,イントロで系統関係と化石に生理学的知見を合わせて真骨類の淡水起源を仮定している.


リラキシン

Yegorov S, Good S 2012.
Using paleogenomics to study the evolution of gene families: origin and duplication history of the relaxin family hormones and their receptors. Plos One 7: e32923.

リラキシンとその受容体遺伝子の進化.


Pitx 1

ピトックス 1 (Pitx1) 遺伝子. hhmi,

Pituitary homeodomain transcription factor (Infante et al. 2013).四足類では後肢の形成,魚類では腹鰭の形成に関係している (キャロル, 2007).

Infante CR, Park S, Mihala AG, Kingsley DM, & Menke DB (2013)
Pitx1 broadly associates with limb enhancers and is enriched on hindlimb cis-regulatory elements. Dev. Biol. 374(1):234-244.

ChiP-Seq によって Pitx 1 が転写標的にしている遺伝子をゲノムワイドに特定.Pitx1 の結合部位は,肢形態形成に含まれる遺伝子群の近くに多く存在した.

Rubinstein M, de Souza FSJ 2013.
Evolution of transcriptional enhancers and animal diversity. Philosophical Transactions of the Royal Society B-Biological Sciences 368.

転写エンハンサーの総説.エンハンサーの欠失が体の一部の欠失につながる例として,真骨類 Pitx1 (淡水の棘なし集団では,腹部の Pitx1 特異的エンハンサーが欠失.進化史で何度か起きている) と哺乳類 AR を例としてあげている (P6).

Chan YF, et al. (2010)
Adaptive Evolution of Pelvic Reduction in Sticklebacks by Recurrent Deletion of a Pitx1 Enhancer. Science 327(5963):302-305.

イトヨの腹鰭にある棘の有無という大きな形態的変化が,たった一つの遺伝子 (Pitx1 遺伝子: 発生のコントロールに鍵となる) の調節 (組織特異的なエンハンサーの有無) によることを示す.

Floudas D., et al. 2012.
The Paleozoic origin of enzymatic lignin decomposition reconstructed from 31 fungal genomes. Science (New York, NY), 336:1715–1719.

木の木部を支えるリギンを唯一消化できる酵素の起源.菌類のゲノム比較解析.



Hox 遺伝子

Martin KJ & Holland PW (2017)
Diversification of Hox Gene Clusters in Osteoglossomorph Fish in Comparison to Other Teleosts and the Spotted Gar Outgroup. J. Exp. Zool. B Mol. Dev. Evol.

Deschamps J. 2016.
Birth and upgrowth of the Hox topological domains during evolution. Nat. Genet. 48:227–8.

Burglin and Affolter (2016)
Homeodomain proteins: an update. Chromosoma. 125 497-521.

総説.

Narendra V, Rocha PP, An D, Raviram R, Skok JA, Mazzoni EO, et al. 2015.
CTCF establishes discrete functional chromatin domains at the Hox clusters during differentiation. Science 347:1017–21.

Gaunt SJ. 2015.
The significance of Hox gene collinearity. Int. J. Dev. Biol. 59:159–70.

Baughman KW, et al. (2014)
Genomic Organization of Hox and ParaHox Clusters in the Echinoderm, Acanthaster planci. Genesis 52(12):952-958.

Gehrke AR et al. (2014)
Deep conservation of wrist and digit enhancers in fish. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.

形態比較では難しい四足類の手足 (limb) と真骨類のヒレ (fin) の対応関係を遺伝子レベルで追求

Martin, K.J., Holland, W.H. 2014
Enigmatic Orthology Relationships between Hox Clusters of the African Butterfly Fish and Other Teleosts Following Ancient Whole-Genome Duplication. MBE.

Main message: 3R-WGD で重複した Pantodon (アロワナ類) の hoxa クラスターはアロワナ類が分岐する以前に二倍体化 (diploidization) が完了したが,hoxb, hoxc, hoxd クラスターはアロワナ類と他の真骨類系統で別々に二倍体化したと示唆.
方法: Hox cluster だけでなく,3R-WGD 後のゲノム進化に多くの考察を加える.Pantodon のゲノムと BAC シーケンスから本種の全 Hox 遺伝子クラスタを解析.これまで真骨類は 7 Hox クラスタ (4x2-1) のものが多かったが,Pantodon は 5 クラスタのみ (Hoxb だけ 2 種) であった.Hox 遺伝子の数は 45 と一般的 (Zebrafish: 49; Medaka 46; P5 右中段).
二倍体化の過程: 1) 重複したホメオロガス染色体間の組換えが終了.2) それまで一つの遺伝子座を介して遺伝的に関連のあった tetraploid 対立遺伝子の 2 価の組み合わせが,2 つの独立した遺伝子座をしめる diploid な 2 ペアの対立遺伝子に変化.3) 重複した遺伝子座間での組換えが終了し,突然変異が固定するようになって重複遺伝子は多様化 (P2 左上).
Tetralogy: WGD 後に二倍体化の終了が長引いた場合に形成される 2:2 オーソログ.Genetic homogenizing forces ( 配列の類似した tetraploid 遺伝子座 [後のtetralogs] 間の,同祖的組換えと遺伝子変換) が生じ,その間に通常より塩基置換が蓄積されないと示唆 (P12 左上).この作用によって,遺伝子系統樹が種と WGD の歴史を反映しなくなり形成される.=> Hox B, Hox, C, Hox D では tetralogy が見られた.
サケ類のゲノム重複 (P12): 減数分裂の過程で,WGD 由来重複遺伝子間での組換え,および,ときには四価染色体形成が観察される証拠をもとに,二倍体化が終了していないと示唆.
3R-WGD の起源: 同質倍数体起源か,部分的異質倍数体起源と示唆 (P12 右中段).ゲノミック異質倍数体起源の場合は,分化した 2 種の交雑によって生じた同祖染色体がすぐに二価染色体分離と二染色体継承が生じるので二倍体化がすぐに終了するので,重複遺伝子の合着時間が交雑した 2 種の分岐年代に相当する.一方,部分的異質倍数体起源の場合は,交雑 2 種のゲノムの一部はすぐに二価染色体が形成されるほど分化しているが,他の領域は四価染色体が継承され続け,次第に二倍体化する.他のクラスタより Hox A クラスタだけが速く二倍体化されていたという結果は,3R-WGD がゲノミック異質倍数体起源ではなく,同質倍数体か部分的異質倍数体に起源することを示唆する.3R 後からアロワナ類とそれ以外の真骨類の分岐まで 38–112 My と短いことから,サケ類と同様に,アロワナ類でも部分的に二倍体化が終了していない可能性を指摘 (P12 右下).
アロワナ類 vs カライワシ類の分岐順序: ミトコンドリア遺伝子は問題ないが,核遺伝子データを系統解析する場合は完全に 1:1 の関係にあるオーソログだけ精査して用いるべき,と強調 (P14 右中段).

Montavon T, Duboule D. 2013.
Chromatin organization and global regulation of Hox gene clusters. Philos. Trans. R. Soc. Lond. B. Biol. Sci. 368:20120367.

総説.

Pascual-Anaya J, D'Aniello S, Kuratani S, & Garcia-Fernandez J (2013)
Evolution of Hox gene clusters in deuterostomes. BMC Dev. Biol. 13.

総説.Deuterostomes 新口動物.

Mehta TK, et al. (2013)
Evidence for at least six Hox clusters in the Japanese lamprey (Lethenteron japonicum). PNAS 110(40):16044–16049.

部分ゲノム解読により Japanese lamprey の Hox cluster が 6 つあることを指摘.他の脊椎動物 (有顎) は 4 クラスター持つことから,脊椎動物根幹で生じた 1R と 2R-WGD の後で,円口類系統では特異的に全ゲノム重複が生じたと示唆.さらには,Hox クラスタ内部で予測された Conserved noncoding elements の ortholog 関係が Lamprey vs 有顎類 (ギンザメとヒト) の間で many-to-many であったことから,1R と 2R の系統的位置を再検討する必要があると指摘 (1R と 2R は有顎類根幹および lamprey 系統で,別々に生じた?).
 判定された CNEs をゼブラフィッシュで遺伝子組み換え分析し,これらがエンハンサーとして機能している可能性を指摘.このため,Lamprey,ギンザメ,ヒト,ゼブラフィッシュで判定したオーソログ CNEs は,脊椎動物の共通祖先が持っていたコアセットであるかも知れないと示唆.

Crow KD, Smith CD, Cheng JF, Wagner GP, & Amemiya CT (2012)
An independent genome duplication inferred from Hox paralogs in the American paddlefish--a representative basal ray-finned fish and important comparative reference. Genome Biol Evol 4(9):937-953.

Hox クラスタ配列の解析から,ヘラチョウザメ系統で 42 Mya に WGD が生じていたと示唆.

Ramos OM, Barker D, & Ferrier DEK (2012)
Ghost Loci Imply Hox and ParaHox Existence in the Last Common Ancestor of Animals. Curr. Biol. 22(20):1951-1956.

Higasa K, et al. 2012.
Extremely slow rate of evolution in the HOX cluster revealed by comparison between Tanzanian and Indonesian coelacanths. Gene 505(2):324-332.

タンザニアとインドネシア・シーラカンスの全 Hox クラスタ配列を解読し,極端に遅い形態変化の謎にせまる. 同時期に分化したヒト-ジンパンジーに比べ,シーラカンスの同義置換速度は極端に遅い (11-56 倍) ことが,形態変化の遅さを裏付けると指摘.

Raincrow JD, et al. (2011)
Hox Clusters of the Bichir (Actinopterygii, Polypterus senegalus) Highlight Unique Patterns of Sequence Evolution in Gnathostome Phylogeny. J Exp Zool Part B 316B(6):451-464.

King BL, Gillis JA, Carlisle HR, & Dahn RD (2011)
A Natural Deletion of the HoxC Cluster in Elasmobranch Fishes. Science 334(6062):1517-1517.

板鰓類で Hox C クラスタが欠失していると示唆.ガンギエイ科 Leucoraja erinacea のゲノムを解読し,Hox C がないことを指摘.通常脊椎動物は Hox A-D の 4 クラスタを持つが,サメでも同様の報告があった.ギンザメは A-D がそろっている.マウスでは Hox C の欠如は axial identity にはわずかな影響を及ぼすだけだが,結果的に致死となる (P1517 右最後).板鰓類の形態形成に関連した Hox C クラスタ欠如は,本魚類のゲノムサイズ縮小に貢献.

Lynch VJ, Wagner GP. 2009.
Multiple chromosomal rearrangements structured the ancestral vertebrate Hox-bearing protochromosomes. PLoS Genet 2009, 5:e1000349.

脊椎動物 Hox クラスタに存在する遺伝子の遺伝子系統樹が一致しないのは,脊椎動物の祖先染色体で 2 回の染色体間の交叉 (chromosomal crossover event) が生じたためと示唆.
 1R/2R は同質倍数化であり脊椎動物は偽八倍体とする Furlong and Holland (2002) の主張を支持 (P10 左上).

Guo BC, Gan XN, & He SP (2010)
Hox Genes of the Japanese Eel Anguilla japonica and Hox Cluster Evolution in Teleosts. J Exp Zool Part B 314B(2):135-147.

Chambers KE, et al. (2009)
Hox cluster duplication in the basal teleost Hiodon alosoides (Osteoglossomorpha). Theor Biosci 128(2):109-120.

ハイオドン (オステオグロッサム類) Hox クラスタを PCR で調査.他の真骨類 (7 セット) と違い,ハイオドンでは 8 セットの Hox クラスタが存在することを示唆.

Kuraku S. and A. Meyer. 2009.
The evolution and maintenance of Hox gene clusters in vertebrates and the teleost-specific genome duplication. Int. J. Dev. Biol. 53: 765-773.

総説.脊椎動物における Hox 遺伝子クラスターの進化.最節約的に祖先の Hox クラスター構造を推定.

Siegel N, Hoegg S, Salzburger W, Braasch I, & Meyer A (2007)
Comparative genomics of ParaHox clusters of teleost fishes: gene cluster breakup and the retention of gene sets following whole genome duplications. BMC Genomics 8.

Takamatsu N, Kurosawa G, Takahashi M, Inokuma R, Tanaka M, Kanamori A, Hori H 2007. Duplicated Abd-B class genes in medaka hoxAa and hoxAb clusters exhibit differential expression patterns in pectoral fin buds. Development Genes and Evolution 217: 263-273.

メダカの Hox 遺伝子クラスターの発現パターンが胸ビレと胴で異なることを実験的に示した.Subfunctionalization の証拠になるかもしれない.

Crow KD, Stadler PF, Lynch VJ, Amemiya C, Wagner GP. 2006
The “fish-specific” Hox cluster duplication is coincident with the origin of teleosts. Mol Biol Evol , 23:121–136.

GARCIA-FERNANDEZ, J. (2005).
The genesis and evolution of homeobox gene clusters. Nat. Rev. Genet. 6: 881-892.

Chiu CH, et al. (2004)
Bichir HoxA cluster sequence reveals surprising trends in ray-finned fish genomic evolution. in Genome Res., pp 11–17.

Wagner GP, Amemiya C, & Ruddle F (2003)
Hox cluster duplications and the opportunity for evolutionary novelties. PNAS. 100(25):14603-14606.

Amores A, Force A, Yan YL, Joly L, Amemiya C, Fritz A, Ho RK, Langeland J,
Prince V, Wang YL, et al. 1998.
Zebrafish hox clusters and vertebrate genome evolution. Science 1998, 282:1711–1714.