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井上 潤 (東大海洋研)・宮 正樹 (千葉中央博)・
ベンカテッシュ ビラッパ (分子細胞生物学研究所)・西田 睦 (東大海洋研) |
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シーラカンス 2 種の分化を引き起こした地史的要因は ? |
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第一に 2 種の間で現在でも遺伝的交流があるという前述の仮説が挙げられる (図 A).二番目は,オーストラリア大陸とユーラシア大陸の接近に伴うインド・オーストラリア島弧の成立 (1 千万年前) によってシーラカンス 2 種が分化したとする仮説である (図 B).我々の解析によると 1 千万年前には 2 種は完全に分化しているので,これらの仮説は候補からはずして良さそうだ. |
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第三の仮説は,インド亜大陸とユーラシア大陸の衝突 (5 千万年前) がシーラカンスの祖先集団を地理的に分断し,インド亜大陸を挟んでシーラカンス 2 種の分化を引き起こしたとする仮説である (図 C).ユーラシア大陸へのインド亜大陸の衝突は,ヒマラヤ山脈と多くの大河を形成した.アメリカ・スミソニアン博物館のスプリンガー博士 (Dr. Victor G. Springer) は,インド亜大陸の沿岸域に流れ出る大河はインドとユーラシア大陸の衝突から数百年万年後に大量の堆積物を生じて,かつてインド洋全域に存在したと考えられるシーラカンスの生息域を破壊したため,シーラカンスの祖先集団がインド亜大陸を挟んで分岐したと考えていた.我々が行ったミトコンドリアゲノムの解析によると 2 種の分岐年代 (3 千 5 百万年前) は,インド・ユーラシア両大陸の衝突から 1 千 5 百万年後となり,スプリンガー博士の仮説と見事に一致したのである. |
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シーラカンス 2 種は,鱗表面の色彩が違う以外はそっくりである.哺乳類に目を向けると,シーラカンス 2 種の分岐が生じた時期にはヒゲクジラ類とハクジラ類 (2 千 7 百万年前) および新世界猿とヒト (3 千 5 百万年前) がそれぞれ分岐している.同程度の時間が費やされたにもかかわらず,クジラ類や霊長類とは異なりシーラカンスではほとんど形態的な変化が生じなかったのである. |
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Inoue, J. G., Miya, M., Venkatesh, B., Nishida, M. 2005. The mitochondrial genome of Indonesian coelacanth Latimeria menadoensis (Sarcopterygii: Coelacanthiformes) and divergence time estimation between the two coelacanths. Gene 349, 227−235. [PubMed] |
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[2005/4/29] この研究はナショナルジオグラフィクス誌で紹介されました. |
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