概説:

phyloBARCODER は、系統樹を推定してメタバーコーディング DNA 配列の種判定を行うウェブツールです。種名を判定し、リード配列から同じ種の配列を選定します。解析ページは、Animals(動物のミトコンドリア遺伝子)、3ドメイン(SSU rRNA)、Plants(植物の rbcL)、Fungi(ITS1・ITS2・LSU rRNA)に分かれています。

インプットファイルとして、環境 DNA やメタバーコーディングサンプルから得られた配列一群 (ここでは anonymous 配列と呼びます) をアップロードして用います。 データベースとして、ユーザー独自が作成した参照配列も利用できます。 期待される結果として、BLAST identity が同じ場合でも、より近い配列を選定することがあります(result674_Tree_vs_similarity.zip)。


追加した解析:3ドメイン・Plants・Fungi

解析したい遺伝子領域に合わせてページを選びます。これらの機能は試験公開中です。検証結果や不具合の報告を募集しています。

3ドメイン:SSU rRNA(PR2 / SILVA)

3ドメイン の解析ページは、主に真核生物の 18S rRNA 配列を対象とします。Reference database で PR2 v5.1.1、SILVA SSU 144 Parc、SILVA SSU 144 Ref NR99 を選べます。PR2 は原生生物を中心に、動物・菌類・植物も含むデータベースです。SILVA には真核生物の 18S に加え、細菌・古細菌の 16S rRNA も含まれます。PR2 の全データにも細菌・古細菌・細胞小器官由来の SSU 配列が含まれています。

Parc は広範な配列を収録し、Ref NR99 は品質・配列長の条件で選別した後、99% の配列類似度を基準に冗長性を減らしたデータベースです。入力配列と同じ遺伝子領域の参照配列を用いてください。18S V4 環境配列(PR2)と、細菌・古細菌の 16S V4–V5 環境配列を読み込むボタンがあります。

Plants:葉緑体 rbcL

Plants の解析ページは、植物の葉緑体 rbcL 配列を対象とします。参照データベースは Bell の配列ライブラリーに FTOL と Kuo のシダ植物データを追加したものです。世界の全植物を網羅したデータベースではありません。必要に応じて、対象の植物や近縁種の参照配列を User DB に追加してください。

英国の空中花粉(Brennan 2019)とフロリダのハチが集めた花粉(Bell 2017)の配列を読み込むボタンがあります。rbcL reference はマツ属の参照配列を用いた例です。

Fungi:ITS1・ITS2・LSU rRNA

Fungi の解析ページでは、Marker region で ITS1、ITS2、LSU rRNA(28S)を選びます。ITS1・ITS2 では UNITE v10.0(2025年2月19日版)の選択した領域の参照配列を検索します。LSU では SILVA LSU 138.2 Parc または Ref NR99 を選べます。LSU の SILVA データベースには菌類以外の生物群も含まれます。

入力配列と Marker region を一致させてください。ITS1 と ITS2 は異なる領域なので、混ぜて解析しないでください。ITS の読み込みボタンは参照配列を用いた実演例です。LSU には腐朽材から得られた環境 DNA の27 OTUの例(Shirouzu et al. 2020)があり、Parc と Ref NR99 で系統樹や一致する配列を比較できます。

共通の操作

種名を調べたい配列を FASTA 形式で Anonymous sequences に貼り付けるか、ファイルから読み込みます。Number of queries で先頭から何配列をクエリにするか指定し、参照データベースと各データベースのヒット数・E-value を選んで SUBMIT を押します。必要に応じて独自の参照配列を User DB に追加できます。結果の系統樹とアライメントを確認し、参照配列との関係から種判定を評価してください。以下の (A)・(B) は動物のミトコンドリア遺伝子を用いた従来の操作例です。

(A) Species Identification

ここでは例として、12S rRNA 環境 DNA 配列 (MiFish) をアップロードして用います (Yu et al. 2022)。
ユーザーは、Fish 12S と書かれたリンクから、これら anonymous (種名のわからない) 環境 DNA 配列を、テキストボックスにコピー&ペースします。ここでは、2 つの OTU を同時に種判定するために、Number of queries を Fist 2 sequences にセットします。

Number of queries: このボックスは、「First 10 sequences」 (fasta 配列トップに記載した10 配列) を最大としています。「First 2 sequences」を選んだ場合、BLAST search ではこれら 2 つの配列だけが用いられます。しかし、2 クエリ配列を含んだ全ての anonymous 配列が、「Anonymous DB」に変換されます。このため、fist 2 sequences と類似した、アップロードした anonymous 配列は、その後作成される多重配列に含まれます。残りの、anonymous 配列 (BLAST で選ばれなかった) は、アライメントに含まれません。

-num_alignments と -evalue オプション:アライメントに含まれる配列数を調節することで、より正確な種判定を可能にします。
Anonymous DB では、これらの数値は、BLAST hits の数を増加または減少させることで、クエリ配列と同じグループに属する anonymous 配列を明らかにします。
Species DB (Pre-installe DB) では、系統樹内部で、注目する種あるいはグループ判定のために用いる適切なルート配列を選定します。Haplotype DB では、同じ種から得られた異なる参照配列 (haplotypes) を加えることで、種、グループあるいは集団の境界を鮮明にします。
User DB では、このデータベースからアライメントに加える配列数を増減します。もし -num_alignments を 0 にすれば、そのデータベースは利用されません。

結果は、Status > Finished の隣にあるリンクを押すことで得られます

ユーザーは、得られた系統樹を直接目でみて、種判定を確認する必要があります。

種判別の確認に、アライメントも利用できます。

phyloBARCODER は、ユーザーが設定したクエリ配列の種判定結果を種リストとして産出します。種と分類は、Pre-installed DB から得られたBLAST hits* から作成され、taxon_assignment_tree.csv ファイルに保存されます。上の例では、OTU_6 の種名は、Scomber japonicus だけでなく S. australasicus と S. colias も候補として挙げられています。より種名を絞るには、それぞれの種の分布を考える必要があります。
*User DB (ユーザーが独自に作成した参照配列) から得られた BLAST hits からは、種名は作成されません。

Example: Fish ASV analysis
Anonymous sequences
KS1815-B06-0m_ASV.fasta.txt
Raw data
KS1815-B06-0m_S50_R1_001.fastq.gz
 
KS1815-B06-0m_S50_R2_001.fastq.gz
 
(Yu et al. 2021)
Example: Copepod analysis
Reference sequence
Metridia_pacifica_lucens_MZGdb_Selected.txt
 
(MetaZooGene Atlas & Database, 11 Oct 2023)

テキストボックスの配列だけで系統樹を作成できます。


(B) Sequence Extraction

Scomber 属で、12S rRNA 遺伝子の参照配列の登録がある種を数えます。
以下のパラメータを入力あるいは選んでください:
Pre-installed DB
Species
Gene
12S (srRNA)
Classification
Scomber

Scomber 12S rRNA 配列は、これまで知られている Scomber 属全 4 種について登録されていました。このことは、Scomber 属の参照配列がないために、種査定がおかしくなる可能性が少ないことを意味しています。

(C) BLAST による種判定

phyloBARCODER では、後生動物のミトコンドリア遺伝子15領域を収録した MIDORI2、魚類のミトコンドリア 12S rRNA 遺伝子を収録した MiFish_DB v50、または SSU rRNA 配列を収録した PR2 v5.1.1 を対象に、オンラインで BLAST 検索を行えます。PR2 は主に真核生物の 18S rRNA を収録し、細菌・古細菌・細胞小器官由来の配列も含みます。FASTA 形式の環境 DNA・メタバーコーディング配列から種名の候補を調べ、クエリごとに最大3件の BLAST ヒットを CSV ファイルとしてダウンロードできます。
BLAST による種判定の解析画面

Citation

Inoue J. et al. phyloBARCODER: A web tool for phylogenetic classification of eukaryote metabarcodes using custom reference databases. Molecular Biology and Evolution 2024, 42: msae111. doi: 10.1093/molbev/msae111

利用しているソフトウェア

Similarity search
BLAST+ (blastn 2.7.1)
Alignment
MAFFT v7.490; trimAl 1.2rev59
Tree search
ape in R, Version 5.6.2
Pre-installed database
MIDORI2 longest (species) and uniq (haplotype)